危機的経営状態を何とか克服し前を向いて進む、言い換えると、地獄の淵から生還した旧知の経営者が上京するということで久々に歓談する機会があった。
15年以上前に出会ったころ、ともに信奉していたドラッカー先生の教えは役に立ったよねなどと柔らかな時間が過ぎてゆく。
今後ますます厳しさを増す旅館経営。経営者が忘れてはならないこととは。
(1)お客さまに満足していただくことへの情熱
旅館経営はお客さまとの接点が非常に重要。お客さまに対して心地よい体験やサービスを提供することがすべての始まりだという強い思いを持ち続ける。個人的満足と経営者満足を取り違えることがないようにしたい。
(2)強固なリーダーシップ
旅館経営者はチームを率いる能力が必要。組織を効果的に運営し、スタッフを指導・育成するとともにチームワークの大切さを共有する組織を作り出す。あくまでお客さま満足の最前線はスタッフ、そのスタッフを大切にすることが経営者の任務であることを忘れないようにしたい。
(3)柔軟性と創造性
旅館業界はこれからも激変する。気を抜くことがあれば組織の存続にかかわる。環境の変化やお客さまのニーズに対応するために、柔軟性と創造性を持ち、新たなアイデアや解決策を見つけ出す能力が求められる。組織内はもとより外部の力を借りまくることも必要。
(4)問題解決能力
旅館経営では日常的にさまざまな問題や課題が発生する。対顧客、対従業員、対地域社会、対法規などさまざまで、問題になる事柄は刻々と増幅し変化している。迅速かつ適切に対処し、そのままにしておかないことが重要。問題解決力を高めるためには分析力や判断力を養うことが求められる。法務・労務などについて気軽に相談できる環境を構築する必要がある。
(5)コミュニケーションスキル
旅館経営者にはスタッフやお客さまとの円滑なコミュニケーションが求められる。効果的にコミュニケーションするためには自分のすべてをさらけ出すことが有効かもしれない。その上で意思疎通を徹底的に図ることで、組織内外の円滑な関係が構築され、諸問題の発生の芽を事前に察知することが可能となる。
(6)経営戦略の構築能力
旅館経営者には将来を見据えた経営戦略を構築する能力が必要。市場動向や競合状況を分析し、中長期的なビジョンと具体的なアクションプランを策定することで、競争力を維持し持続的な成長を実現することができる。独自の経営戦略も必要だが思い切って二番煎じを行うことのほうが有効かもしれない。
(7)実行と継続
これらのことを不断にすべて実行し続けること。これがなかなか難しいのだが、いやなら経営者をやめるしかない。(本気でやめることを考えてみることもありかもしれないが…)やるしかない。
(EHS研究所会長)