「人手不足が企業活力復活の足かせになっているけど、サービス業に関しては10年以上前から解決されないまま来てしまったよね」とは、10年前に自分のホテルを整理して再出発した友人。一方、東京都内でレストランを新規オープンしようとしている友人もアルバイトでさえ集まりにくく苦労していたりする。ましてや、地方のサービス業においては人材不足の度合いは増すばかり。何年も前から外国人の雇用を本格的にやってはきているが、人手不足は永久に続くものと覚悟し経営しなければならないという声も聞かれる。
そのような中「支配人クラスの人材を探しているが誰かいい人いないかなあ」とか「そろそろ料理長が定年退職するのでなんとかしたい。地元の調理師会なんて全くあてにならないので困っている」などという話は日常茶飯事だ。
その一方、「経営していた旅館は昨年けじめをつけ、仕事を探しているが40歳を過ぎるとなかなかこれという求人もない」とか「この年になると次の人生に踏み切ることはなかなか難しい。でも、今のままじゃあどうにもならないことは分かっているんだが」という話に出くわすこともよくある。
人材不足については、オペレーションを見直して現状の人数以下で運営できる体制を構築することはもちろん、新卒採用や外国人雇用にも重点を置き社内の教育をしっかり行って育ててゆくことしか有効な方策はないのかもしれない。
しかし、次の人生の選択についてはこれまで何人もの経営者の背中を押してきたが、その後の人生が好転している人の行動にはいくつかの共通点が存在する。
(1)客観性を伴った現状認識。経営者の最終責任は事業継続と雇用確保にあるのは言うまでもない。責任を全うすることについて、自社に灯った信号の色が何色なのかを認識し危機管理を徹底することが重要だ。
(2)私情の封印。経営者としてどうしたいかを明確にし、自分や家族のことは二の次にし事業と雇用について突き詰めて考えなければならない。
(3)決断と覚悟。命をとられることはないという開き直りも必要だ。撤退戦は覚悟が揺らぎやすいので、ちゅうちょするとその先にあるのは全滅しかない。
世の中を見回すと、これらのことを実行して新たな人生をスタートしている人がたくさんいる。雇われる環境の中で「自分のやってきたことを生かせる環境がこんなにあるとは思っていなかった。まだまだやりますよ」「資金繰りのことを考えずに仕事に専念できるって素晴らしい。お客さまの笑顔が本当にエネルギーになっています」などと言いながら、実力を十二分に発揮している人たち。もしかしたら再度経営に携わる日があるのかもしれない。
一方、決断できずに沈みゆく現状にとどまっている人も大勢いる。現状維持は相当に難しい。なぜなら、活気のないところに人は集まらないし、時間の経過に伴って人も施設も老朽化する。
自分だけが滅びてゆくのは仕方ないにしても、家族ましてや従業員を巻き込むことだけは避けたい。
(EHS研究所会長)