この2年間で新型コロナ融資は62兆円が積み上がり、既存借入金の返済猶予も65万件以上に上っている。帝国データバンクによれば経営破綻が懸念される企業は30万社を超えるとの状況だ。
そのような中、国土交通省管轄の地方運輸局が主催する「旅館産業に係る金融懇談会」にいくつか参加した。出席者は旅館産業側から各県・各ブロックの日本旅館協会、旅館ホテル生活衛生同業組合。政府系金融機関から日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行など、民間金融機関から各県の第一第二地銀、信用金庫、信用組合。行政機関から運輸局、財務局、経済産業局。厳しい状況が続く旅館産業を憂えて活発な意見交換が行われた。
その中で、旅館ホテル経営者にとって興味深く重要な内容がいくつかあったので紹介しておきたい。
(1)当面さらに厳しさを増す経営環境において、金融機関は赤字や債務超過に陥っているからといって画一的な対応は行わない。現状に至った理由を精査し今後の事業継続のために何が必要かを債務者と共に考え個別にきめ細かに対応する。
(2)いくつかの民間金融機関においてはアフターコロナをにらんだ新たなファンド創設など資金提供可能な状況を模索している。
(3)観光庁による「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化」事業は令和3年度内での実施は困難な状況ではあるが令和4年度中には実施する予定。
(4)経済産業省の「事業再構築補助金」については令和4年度に数回にわたって実施される予定。
(5)Go Toキャンペーンについては令和3年度予算が国庫に返納されるとの話もあるが、現状では不確定。しかしながら、令和4年度早期に何らかの形で実施される予定。
しかし、現実問題としては各金融機関による厳正な格付けが実施されるだろうし、債務者にとっては「独り立ち」「廃業」「事業譲渡」など方向性を示さなければいけなくなることは容易に予想できる。また、再生支援協議会など支援機関の積極的活用も視野に入れておくべきかもしれない。こういう状況を踏まえ経営者に必要なことは―
〇自社の立ち位置を知るための具体的アクションプランを伴った経営改善計画書の策定。
〇拙速な危機管理。
〇売り上げ増のため魚がいる海に糸を垂らすこと(イールドやレベニューは当たり前のマネジメント)。
〇さらなる経費削減(簡単にできる通信固定費・電力・人件費など)。
〇このような時こそ特に管理部門のDX推進。
等ではないだろうか。これらのことはいかなる環境においても実施する必要があるのだが、意外にできていない。政府系・民間を問わず金融機関は専門家の紹介などを積極的に行うとの姿勢は明らかだし、「傘をさしかけよう」との姿勢も珍しく見て取ることができるので活用しない手はない。
過去を振り返ると、土砂降りでも暴風でも前を向いて一歩踏み出す者にのみ道が示されてきたのではないだろうか。こんな時代だけど「それでも前を向こう」。
(EHS研究所会長)