【旅館経営ワンポイント講座 8】「対話」と「会話」の違い 渡辺清一朗


 ウイルス騒動という人災が収まらないまま、他国への軍事侵攻、それらに伴うインフレ、資源やエネルギーの不足など、私たちを取り巻く環境は激変している。身近なところを見回しても、中小企業の置かれた状況は容易ではないが、よく見てみると同じ業種、同じ地域でも前進している会社と停滞している会社が色分けされ、その差は2年前と比べて一層開いたかに見える。

 なぜそうなっているのかについてはさまざまな理由が考えられるが、その一つに働く人の対話力があるのではないだろうか。

 仕事のいろいろな場所や局面で対話なのか会話なのかよく分からない状況に出くわす。そのほとんどのケースが会話と言っていいかもしれない。対話とは対立などものともせず異なる考えを持つ人と話し合い意見の対立点を確認し、協同して解決策を見いだすこと。対立を避けなあなあで関係を深めようとする会話とは全く違うことだ。

 前進している会社の中でよく見られる光景は、相手の立場を理解し、その考えに価値を見いだしつつ、職務遂行上必要なことは主張するという姿勢だ。内部会議においても、社外との会議においても求められることだ。

 その上で経営者に必要なことは、(1)状況把握と利害関係者を知ること(2)さまざまな利害関係者が何を考えているのかを知ること(3)乗り越えるべき問題は何かを的確に捉え解決方法を模索すること(4)いくつかの解決方法の中から最適解を見いだすこと。

 これらがスムーズに行われる環境を作ることだと思う。

 さまざまな会社の内部会議に出席したり、債務者と共に金融機関をはじめとする債権者との経営改善会議に臨むことが多々ある。そこでも会話が横行し、対話がなかなか進まない状況に出くわす。

 中小企業が置かれている状況を見るにつけ、このままでいいのだろうかとの思いを強くする。

 2022年3月、経済産業省・金融庁・財務省から「中小企業活性化パッケージ」が発表された。予定通り経営改善支援センターと中小企業再生支援協議会が統合され「中小企業活性化協議会」が4月から設置される。その目的は「中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを一元的に支援する」というものだ。

 その内容を読み込むと、日本の企業数の9割以上、雇用の7割を占める中小企業を何とかしなければ国家の根幹に悪影響を及ぼしかねないとの思いが伝わってくる。組織の統合に伴う職務の変化や事業所の拡張・移動など各県の現場は混沌(こんとん)としているようで、まともに動き始めるのはゴールデンウイーク明けになるようではあるが、経営再建に取り組む経営者にとっては使わない手はないと思う。

 また、ポストコロナに向けて、金融機関や独立系ファンドなどが中心となって地域活性化に寄与すべき新たなファンドの組成も活発化している。経営者は自ら情報を獲得する努力をすること、有効な情報を伝えてくれる士業と付き合うこと、事業再生に理解のある金融機関と友好な関係を構築することも必要最低条件である。

(EHS研究所会長)

 
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