前回は「市場開拓」について、可能性ある分野を見つける方法をお伝えした。しかし有望な市場が見つかったとしても、そこに伝える手段を持たなければたぐり寄せることはできない。そこで今回はアプローチの方法について考える。
今回もまた、似たような図表を掲げる。今回のマトリックスは「ターゲットにアプローチする方法」を考えるためのものだ。これもかつて「旅館の経営指針」に掲げたものを元にしているが、表の呼び名と、近年の実情に即してタテ・ヨコの中身を変えてみた。
横軸は販売経路(販売チャネル)を表す。旅館の販売経路は「直接販売」と「間接販売」に二分される。このうち直接販売は、昔からある電話予約と人的セールス、そして自社HPの三つだが、この表の趣旨は「ターゲットに知らせる方法」を考えることにあるので、電話予約は除外している。
縦軸はそれらの販売経路を前提に、あるいはそれらを通して行うプロモーション手法を表す。このうち「マス広告」とは、伝統的な「マス4媒体」(=TV・ラジオ・新聞・雑誌)を意味するが、多くの旅館にとって、費用対効果の面でなかなか利用するのは難しい。
旅行会社向けの「企画チラシ」等は、かつて旅行会社が主要な販売チャネルであった時代には、有効かつ重要なプロモーション手段であったが、その有効性は流通構造の変化で大きく低下している。特にコロナ禍で団体の動きが封じられている今は、ほとんど意味をなさない。
代わってメインストリームとなったのが、ネットだ。表の縦軸に示した項目のうち、上半分はネットを媒介とする。
こうして見ると、集客のためにとりうる手段はそれほど多くない。仮にこれが「とりうる手法」の全体像だとすれば、改めて次のようなことが言える。
(1)ネットを通じたプロモーション手法をとことん研究し、そこにエネルギーを集中投下すべき。
(2)直販比率を維持するならば、自社HPを軸に、そこへの流入促進と、HP内で予約に導くための方策をしっかり
講ずるべき。
(3)パブリシティの活用を積極的に考えるべき。
(4)ネットにせよリアルにせよ、顧客への「直接コンタクト経路」を広げることに取り組むべき。
(5)「お客さまの来館」は最大のタッチポイント(接点)。「来館時訴求」を決しておろそかにすべきでない。
(リョケン代表取締役社長)