【旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 162】新型コロナウイルスへの経営対応49 原理原則3 品質向上3 佐野洋一


 感染の第6波がようやく収まりを見せるかと思いきや、今度はロシアのウクライナ侵攻で、エネルギー費や食材費の高騰という厳しい現実を突きつけられている。またこのたびの福島・宮城を中心とした地震では深刻な被害もあり、衷心よりお見舞い申し上げます。

 さて、「『…頼みの経営』から抜け出す」ために掲げた七つの「原理原則」のうち、「品質向上―劣化を放置しない、磨きをかける」について考えている。

 本題に入る前にお詫び―。前回、「修繕サイクルと品質状態」という図を掲げたが、これに誤りがあったので、この場を借りて訂正したい。上下二段に示したイメージ図のうち、上の「平均水準(A)」ラインを「許容できる最低レベル」と混同して下の図に当てはめてしまったが、正しくはもう少し低いラインである。従ってこれを下回るレベル(淡いグレー)の期間も少し短くなる。間違いをお詫びします。

 前置きが長くなったが、本題に入りたい。「品質劣化放置の要因」は、(ⅰ)感性(美意識)の欠落/(ⅱ)見慣れ/(ⅲ)規範の不在―の三つが重なったところで起こるとお伝えした。このうちどれか一つでも改善されれば、劣化の放置は防ぐことができる。ではそのためにどうしたらよいか。

 一番簡単な解決の方法は、「(ⅱ)見慣れ」要因を潰すことである。といっても、見慣れそのものを根絶するのは難しい。良くも悪くも、人間は「慣れる動物」である。どうするかといえば、「改めて見る機会」を作ることだ。3カ月に1回ぐらい、関係者何人かで、「そのつもりで」館内を見回ってみるとよい。これだけでかなり変わることが期待できる。

 よりシステマティックな方法は、「(ⅲ)規範の不在」要因を解消すること。すなわち、「基準」と「対応ルール」を定め、それを守るよう周知、徹底することである。基準とは、「これは良くない状態」と判断する物差し。対応ルールとは、「不備・不具合を見つけるべき人(部署)」「報告ルール(誰から・誰に・どのように)」「判断する人」「対処する人(部署)」「報告~対処の期間」といった内容である。

 最も難易度が高いのは、「(ⅰ)感性(美意識)の欠落」要因を改善することだろう。「これ、まずいんじゃない?」と気づき、また思う感覚を皆が備え、かつそういう意識で日々の状況を見ている必要がある。これを実現するための確実な処方はまずない…が、感性に磨きをかける方法として一つ考えられるのは、良いもの、美しいものを見る機会を多く作ることかと思う。ありていにいえば、品格の高いよその施設―旅館・ホテル、レストラン、美術館など―をたびたび体験することだ。そして大事なのは、「なぜこれが美しいのか?」を話し合う場を設けることである。このようにして社員の感性レベルを高めておくことは、他のさまざまな面でも生きてくるだろう。

 「どれか一つでも改善されれば…」と申し上げたが、一つだけよりも二重、三重に策が講じられることがむろん望ましい。ただしいずれの場合も、「問題はできる限り対処する」が大前提である。いかに問題が発見できても、「言っても取り上げてもらえない」では、品質の劣化ばかりか、やる気の低下にもつながりかねない。

(リョケン代表取締役社長) 

 
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