【日本政府観光局インバウンド最新リポート 34】ロシアの訪日旅行市場 JNTOモスクワ事務所 本蔵愛里 所長


交流の年、認知度向上に好機

 2014年の経済制裁を経て5万4千人前後を推移してきた訪日ロシア人数だが、17年は大幅に増加し、7万7200人と過去最高を記録した。年初からの訪日ビザ緩和や日露間航空便の大幅拡充が大きな要因と考えられ、18年についてもさらなる増加となるようさまざまなビジット・ジャパン事業を行っているところである。

 日本の隣国の一つであるロシアは世界最大の国土を持ち、人口は約1億4千万人とヨーロッパ最大である。ヨーロッパへのフライトの途中、眼下に広がるシベリアの大地を機上から眺めたことのある読者も多いと思うが、その国土は東西に約1万キロメートルに及び、国内の時差帯も9区分有する。それだけ、首都の位置するヨーロッパロシアと日本から近い極東ロシアは地理的に離れており、訪日旅行をプロモーションする場合にも大きく異なるアプローチが必要となってくる。

 首都モスクワを中心としたヨーロッパロシアは、日本までのフライト時間が約10時間とロングホールであり、訪日未経験者が非常に多い。日本への好感度は非常に高いものの、知識はまだ浅く、日本で訪問する場所もゴールデンルートが中心となっている。

 一方、ウラジオストク、ハバロフスクを中心とした極東ロシアは、日本へのフライト時間が2~3時間と短く、訪日経験者が多い地域である。人口規模はヨーロッパロシアに比べ小さいものの、訪日ロシア人の約4割以上が極東ロシアからとなっており、リピーターも多い。

 ゴールデンルート以外の地方への誘客は、インバウンド全体の大きな課題であるが、リピーターの多い極東ロシア市場では地方の魅力発信が特に効果的であると考えられ、2回目、3回目の訪日を促す契機にもなる。

 そしてヨーロッパロシアからの訪日旅行日数は、10日~2週間であることが多く、ゴールデンルートに加えてもう一歩足を延ばしてもらうための情報提供が重要になる。

 また、訪日ロシア人の旅行形態は8割以上が個人旅行であること、地方におけるロシア語通訳案内士は都市部に比べ圧倒的に不足していることから、特に地方部において外国人に分かりやすい公共交通機関案内や宿泊案内などが大いに求められていることも、日々旅行会社や旅行者と接する中で痛感しているところである。

 JNTOではヨーロッパロシア、極東ロシアともに商談会やセミナー、出展事業を行っており、宿泊施設・観光施設や地域全体の魅力など幅広いサービスの情報をロシア市場全体に提供する場として大いに活用していただければと切に願っている。

 18年は「日本におけるロシア年」「ロシアにおける日本年」であり、ロシアで数多くの日本関連事業が開催される予定である。日本の認知度向上が大いに期待できるこの機会に、ぜひロシアでの訪日プロモーションをご検討いただければ幸いである。

 
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