高い消費額、今後の訪日期待
インド人の結婚式は、盛大かつ派手であるという話を耳にされた方も多いのではないだろうか。インドにおける結婚式市場は約5兆円と言われており、大きな結婚式となると時には千人を招待し、中には家の全財産をつぎ込むケースもある。航空券代など招待者にかかる費用全てを負担するのが一般的で、基本的に新郎新婦の親が全額工面する。そのためウエディングローンなるものも存在するほどである。また、結婚式、披露宴は1日では終わらず、数日にわたって行われる。
昨今は、海外で結婚式を挙げる人が増えている。海外のみならずリゾート地で行う結婚式はデスティネーションウエディングと呼ばれるが、JNTOデリー事務所ではこれを日本に誘致するための取り組みを行っている。まずは実態を把握するため、1年かけて市場調査を行った。
インドの中高所得者層を対象に、デリー、ムンバイにおいて実施した本調査結果(図1)から分かる通り、インド国内で式を挙げた人の平均支出額は815万円(1ルピー=1.63円 2018年5月14日時点)となっており、インド人の結婚式は盛大かつ派手という話を裏付ける結果が出た。続いて、デスティネーションウエディングをご覧いただきたい。インド国内の場合1369万円、海外となるとなんと2689万円を費やしていることが分かった。招待者の数は国内に比べ海外の方が少ないものの、逆に日数は増えている。
次に図2を見ると、海外ウエディングに興味があると答えた人は80%を超えており、海外ウエディング市場は今後ますます成長することが見込まれる。そのため、多くの国がインド人の海外ウエディングを誘致しようと熱心にプロモーションを行っており、地方自治体、旅行会社、ホテルなどを中心とした観光業界関係者と一緒に、デスティネーションウエディングセミナーを開催している国もある。
このように各国が熱心に取り組む市場でありながら、残念なことに日本の観光業界におけるインドへの注目度はまだ低い状況にあると言える。将来有望なのは分かるがまだ取り組むには早い、といった声をよく聞くのだ。インドの人口はすでに13億人を超えていながらも、平均年齢は26.68歳(国連、2015年)と若い世代が多い点や、モディ政権となり、高い経済成長を続けている点など、今後高く期待できる国である。
今回ご紹介した海外ウエディングの例から分かるように、インドには非常に高い消費意欲を持つ富裕層と言われる人たちがいることをご理解いただき、日本において、訪日市場としてのインドへの関心が高まればうれしく思う。インドは日本政府が掲げる二つの目標である“旅行者数”と“消費額”の観点からも、重要な国であることは間違いない。