安心な旅行環境 口コミでPR
観光庁の訪日外国人消費動向調査(2017年)によると、韓国人にとって旅行前に役に立つ情報源はブログ(55%)、SNS(30%)となっており、韓国人が信頼する情報源は、同じ韓国人が発信する個人レベルの情報、いわゆる口コミだ。
この背景には、世界一のインターネット(ネット)社会である韓国の姿がある。米国の研究所の調査によると、韓国のネット普及率は世界一の94%であり、韓国人のおよそ10人に9人がスマートフォンを使用している。歩きスマホも日本以上に多いため、ソウル市内には歩きスマホユーザー向けに地面に埋め込んだ交通信号機もできたほどだ。
ネット上で波及する口コミの力は注目すべきことであり、ネット上にあふれている日本の観光情報を活用して韓国人のみならず、世界中の人々が訪日していることは言うまでもない。
しかし、同時に口コミの影響力は常にプラスとは言いきれない。今年の台風や地震による日本の状況について、一部の旅行者によって、豪雨や暴風による被害の動画像とともに「こんな台風今までの人生で初めて見た」「関西空港が浸水している」などといったリアルタイムの被害状況や、「予約しておいたホテルから追い出された」「駅で寝泊まりしている」といった情報が口コミで広まったことが、韓国人の訪日意欲の減退要素の一つになった。
天災を避けることは残念ながら難しい。だが、今回の一連の災害を通じて、訪日旅行者への緊急時の退避・待機基準や、鉄道や航空などの運行・運航情報、そしてその提供方法などは訪日旅行を行うためには不可欠であり、日本全体の関係者がこうした「受け入れ体制」の重要性を再認識したのではないだろうか。
国内各所では、有事の際のマニュアル整備に取り組まれたケースも少なくないと聞いている。
多くの観光資源を持つ日本だが、日本への旅行に少しでも不安を持つ海外の人に安心して訪問、滞在をしてもらうため、このような対応の広報が今こそ必要ではないだろうか。去る9月に関西空港の橋脚が異例のスピードで修繕された際には、韓国でも日本の回復力を賛美する声もネット上に多く見られ、韓国の秋の連休時期における関西方面への旅行者は順調に回復傾向をたどった。
このような感想や感動を日本人以上に共有したがるのが韓国人であると言われているが、この共有したいという動機もスマホ普及の大きなきっかけである。ならば、訪日旅行意欲をかき立てるためにも、今目の前にいる訪日旅行者への的確な情報伝達で安心という感動を与え、これによる口コミの連鎖によって、観光資源だけでない「受け入れ体制大国」を世界にアピールすることが、災いを転じて飛躍につなげる今後の訪日旅行者数の拡大に向けた姿である。