【日本政府観光局インバウンド最新リポート 50】フランス人のライフスタイル JNTOパリ事務所 中山理映子所長


高まるエコロジー志向

 フランスでは、クリスマス休暇から一息ついた2、3月ごろから、次のバカンス先選びとそれを狙った旅行業界によるプロモーション活動が花盛りとなる。2019年は、この時期を狙い日本特集を組んだ旅行雑誌が相次いで発行され、「日本―コントラストと本物の国」「日本―禅の庭から巡礼路まで」といったタイトルや、伏見稲荷や羽黒山、招き猫などの写真が表紙を飾った旅行雑誌が常時店頭に並んでいた。フランスでトレンディな旅行デスティネーションとして、日本の精神性が注目されている証とも言えるだろう。

 他方、フランス人の日常生活におけるトレンドとして、心身ともに健康的で、エコロジーを意識したライフスタイルの実現がある。

 まずは、健康的で自然環境と調和のとれた食事への関心である。フランスでは、「ビオ(Bio)」と呼ばれるオーガニック食品や自然由来の日用品(化粧品、せっけんなど)を好む人が増えており、非常に多くのビオ専門店があるほか、学校給食のビオ比率引き上げに向けた動きもある。宗教上の理由のほか、健康への配慮や主義信条により、ベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義者)になる人も少なくない。フランスでは、日本食には健康的なイメージがあり、中でも、沖縄料理は、長寿の秘訣であるとして、フランスメディアでも度々取り上げられている。

 加えて、現代のストレス社会に生きるフランス人にとって、心の癒やしや精神的な安定も重要な関心事である。「Zen(禅)」や「Yoga」という言葉はよく知られているが、最近では、「マインドフルネス」と呼ばれる瞑想も人気があり、子ども向けの瞑想法を授業に取り入れている学校もあるほどだ。このためだろうか、日本を訪れる多くのフランス人が、高野山に足を運び、日本の精神文化に触れ、宿坊で精進料理をいただき、心静かな時間を過ごすことを好む。

 また、エコロジーの観点から、プラスチック製品を極力使わない「プラスチック・フリー」の動きも盛んだ。フランスでは、16年から、小売業におけるプラスチック製レジ袋の使用が禁止されており、買い物の際にマイエコバッグを持参する人が多い。旅行関係のイベントでも、日本のイラストや文字をプリントした布製エコバッグは、ギヴアウェイとして大変人気だ。さらに、18年には、欧州議会が所定のプラスチック用品の使用禁止法案を可決。これを受け、フランスの有名テーマパークが、園内でのプラスチックストローの提供禁止などの方針をいち早く打ち出している。こうしたトレンドを持つフランス人にとっては、日本のお店でのレジ袋、ストロー、フォークなど使い捨てプラスチック製品の大量消費文化は受け入れがたく感じる部分があるだろう。

 禅や仏教の精神性で注目される日本だからこそ、エコロジーや健康志向といったフランス人の関心事にも積極的に応えていくことで、日本への好感度や信頼感が増し、ひいては、インバウンド観光の持続的な発展につなげていくことができるのではないだろうか。

 
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