【日本政府観光局インバウンド最新リポート 52】中国発のスポーツ観光 JNTO北京事務所 服部真樹 前所長


ターゲットの見極めが鍵

東京2020オリンピック・パラリンピックまであと1年となったが、中国では早くも関心が高まっている。一方でラグビーはあまりなじみがないためか、もう2カ月前だというのにラグビーワールドカップはほとんど話題に上らないのとは対照的だ。

ロンドン、リオ、平昌に続いて、東京でも中国オリンピック委員会管轄区域での五輪観戦チケット販売代理機構(ATR)に指定されたカイサー旅游によると、今回は近隣国での夏季五輪なので50万人以上の中国人の観戦が期待できるとのこと。ちなみにリオ五輪における中国人観客は2千~3千人、平昌冬季五輪においては8千人だったと推計されるだけに、東京への期待は桁違いに大きいと言ってよいだろう。特に人気なのは開会式と卓球で、それ以外にもバドミントン、バレー、体操、飛び込みなどの種目は国民的関心が高そうだ。

販売方式はチケットを含む団体ツアーが中心だが、チケットと航空券・ホテルを組み合わせたパッケージ商品のほか、接待やインセンティブ旅行向けのオーダーメイド商品も販売するという。

こうした「観る」スポーツ観光もさることながら、実際に「する」スポーツ観光も熱を帯びている。中国におけるスキー市場は急成長しており、昨シーズンは日本の多くのスキー場が中国からの家族連れ初級者で大いににぎわったと聞く。

中国人ランナーの日本でのマラソン大会参戦も大変な人気だ。日本のマラソン大会は運営がしっかりしていることと、沿道の温かい応援が励みになることが選ばれる理由だという。

一方ゴルフはどうだろうか。習近平政権発足以後、それまで無秩序に開発されてきたゴルフ場は整理され、営業しているゴルフ場の数は2014年のピーク時と比べて17年には約3分の2に減少した。公務員はプライベートも含めゴルフが一切禁止となり、ゴルフは限られた人のぜいたくな遊びとみなされている。年間8ラウンドを超えるコアなゴルフファン人口は減少傾向で、17年では38~39万人と推計される。

中国からの訪日観光客の主役は家族連れであり、スキーと違って、家族でゴルフを楽しむことはできない。しかもスキー場と違いゴルフ場には日本と中国で大きな違いはなく、わざわざ日本でゴルフを楽しむ理由は乏しい。現状を見る限り、日本のゴルフ場を、スキー場のように中国人観光客でにぎわせるには、取り巻く環境は厳しいと言わざるを得ない。

しかし、人数ではなく質、すなわち消費額を追求するのなら別である。日本と比べて中国ではゴルフ用品は何でも高価だし、北京などの華北では冬の間のゴルフは困難だ。また中国人ゴルファーの多くは会社経営者や管理職の男性である。民間企業の訪日インセンティブ旅行の一環としての買い物を兼ねた避寒ゴルフなど、ターゲットを絞った取り組みが望まれる。

 
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