オンライン広告媒体を活用
世界各国で外出の自由が制限される未曽有の状況の中、自宅で過ごす時間の増加とともに人々の関心が高まっているのが、オンライン広告である。ロシアも例外ではなく、この機会を狙ってさまざまな企業・団体が趣向を凝らしたオンライン広告を配信している。今回はロシアにおけるオンライン広告媒体および情報発信時のポイントについて、モスクワ事務所の事例とともに紹介する。
まず、ロシアにおけるオンライン広告について考える際に重要なのは、中国における百度や微博のように、ロシアにもロシア独自の媒体が存在し、それらはグローバルな媒体と同じように人々の生活に深く浸透しているということである。
例えば、ロシアの検索エンジン市場においてGoogleとともに絶大な支持を誇っているのが、ロシア発のポータルサイト「Yandex(ヤンデックス)」だ。Yandexは2000年に設立されたロシア最大のIT企業で、ポータルサイトのみならずタクシーの配車やフードデリバリー等のさまざまなサービスを展開しており、ロシア人にとってなくてはならない存在である。
また、SNS市場においては、InstagramやFacebookを抑えて「Vkontakte(フコンタクテ)」の人気が高く、19年第3四半期における16~64歳のインターネットユーザーを対象とした調査では、その市場浸透率は83%となっている(表参照)。Vkontakteは言わばロシア版のFacebookであり、自身の近況報告や、共通の趣味を持つユーザー同士がコミュニティを作成し、情報交換を行う場として利用されている。
当所においては、1億人を超えるロシアのインターネットユーザーに対して訪日観光の魅力を訴求すべく、これらの広告媒体を活用して年間を通じてさまざまなプロモーションを実施している。
情報発信時の第1のポイントは、ロシア語で、ロシア人目線のメッセージを発信することだ。ロシアにおいては、ロシア語以外の言語で広告を行う場合には必ずロシア語訳を付することと法律で定められているため(ただし会社名は除く)、ロシア語でのメッセージ作成が必須となる。近年、ロシアにおける訪日旅行の需要は増加傾向にあるが、日本の観光情報をロシア語で発信している事例はいまだ少なく、旅行者や旅行会社は新しくかつ正確な情報を求めている。当所においては、日本の自治体や観光事業者から提供された最新の観光情報をロシア語に訳し、随時公式ウェブサイトやSNSに掲載している。
第2のポイントは、ロシア人の趣味嗜好(しこう)に合ったコンテンツを、目を引く写真とともに発信することだ。昨年当所のSNSに掲載した千以上の投稿のうち、特に好評だったものは桜や日本庭園等の「自然・花」、京都の古民家や懐石料理等の「上品な日本らしさ」をテーマとした投稿であった。また、閲覧者の印象に残る投稿とするためには、観光魅力を端的に表現する美しい写真や動画を添えることも重要である。
外出制限後を見据え、ぜひロシア市場からの誘客施策の参考としていただきたい。