
情報発信、富裕層から反転攻勢
フィリピンでは新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。政府は3月15日にマニラ首都圏を都市封鎖して以降、経済活動再開のために段階的に規制緩和を行いながら感染対策を進めてきたが、7月に入り感染者数が大幅に増加し、8月23日には累計感染者数が19万人を超えた。東南アジアでは最も多い感染者数である。国内・海外共に観光目的の旅行は政府により禁止されており、再開のめども立たない。フィリピン国民は「観光旅行」を夢見続けるしかない状況にある。
ウィズ・コロナ、アフター・コロナ時代の訪日フィリピン市場はこれまでのトレンドと大きく異なってくることは間違いない。フィリピン市場の今後の見通しについて、「ターゲット層」「プロモーション」「旅行会社対応」の三つの視点で述べる。
まずターゲット層としては、従来よりも一層「富裕層」に焦点を当てる必要が出てくるだろう。世界一長いロックダウンを行ったといわれるフィリピンは、経済が疲弊しており、民間調査機関によると、7月の失業率は過去最悪の45.5%を記録。訪日旅行が解禁されても、中間層には金銭的に厳しく、富裕層の需要回復がまず先となるだろう。フィリピンの富裕層は欧米の富裕層と同じような嗜好を持ち、サービスの要求レベルも高く、訪日リピーターも多い。旅行体験、宿泊施設、食事など、全ての面で高品質で特別な対応ができる観光地が選ばれることになるだろう。
プロモーションについては、訪日旅行の解禁が遅れるからといって「やめない」ことが重要である。むしろ、訪日旅行の解禁までの時間を「訪日旅行の夢を膨らませる時期」と捉え、四季の変化や食、お土産に買いたくなるような日本製品など、フィリピン人が関心を持つ情報を動画や写真を使ってSNS経由で積極的に発信し続け、需要を高め続けることが訪日旅行解禁後の反転攻勢に必要な取り組みである。また、今後最も求められるのは「安心・安全」情報である。宿泊施設、観光施設、公共交通機関、飲食店など、観光客が訪れるさまざまな場所で、感染対策が十分に適切に取られているか、できるだけ具体的に多く発信することが、観光地として評価される一番のポイントとなる。
最後に旅行会社対応。現在、政府の規制により旅行会社は商品販売ができず、大変厳しい状況を強いられている。こういう時期だからこそ、日本の旅行業界の安心・安全に関する取り組みの紹介や3密を避ける旅行の提案などを行い、反転攻勢に備えて日本側も協力するという姿勢を示すことが求められる。
2019年は61万人を超え、東南アジアではタイに次ぎ2番目に大きかったフィリピン市場。コロナ収束後、一からのスタートとなるが、少しでも早くコロナ前の水準に戻すためには、今からの取り組みこそ必須である。
在宅者が増える中、JNTOのフェイスブックでウェビナーを開始