2023年7月現在、日本の水際対策が緩和され、徐々に訪日外客数の回復がみえるものの、2023年1~5月の訪日スペイン人客数総数3万900人は、コロナ禍前の2019年同期間と比較すると74.2%の回復であり、当時の勢いに戻るまでにはもう少し時間が必要だ。
主な回復阻害要因として物価や航空券代の高騰、またウクライナ情勢に伴う飛行ルートの変更によるフライト時間増加などの理由があるが、中でも多くの現地旅行会社から大きな阻害要因となっていると言われているのが、スペインと日本を結ぶ直行便の運航が再開していないことだ。
スペインのフラッグキャリアであるイベリア航空の直行便がコロナ禍前は週5便で成田―マドリード間を飛んでおり高い需要があったため、2020年6月17日よりデイリー運航になる予定もあったが、コロナ禍以降運休となっている。多くの一般消費者および旅行会社から運航再開を求める声が上がっているものの、いまだ見通しが立っていない。
こうした状況下ではあるが、いま日本はスペインで最も注目を浴びている旅行先となっている。4月25日にスペインの大手旅行雑誌『Viajes National Geographic(ナショナルジオグラフィック旅行)』が初めて実施した最も優れた旅行先を決める読者投票で、日本が「ベスト・インターナショナル・デスティネーション」に選ばれた。また今春、スペイン語版『コンデ・ナスト・トラベラー』が実施した読者投票においても米国、フランスやイタリアといった観光大国が最終候補に名を連ねる中、日本が最も優れた旅行先に選ばれた。
それだけではない。日本の水際対策緩和後、本格的な訪日旅行再開の年となる今年は、日本とスペイン・バスク州の交流年であり、両国で交流事業が活発に行われており、同州だけでなくスペイン全土に波及して日本への関心が向けられている。
これら日本への関心の高まりが相まって、現地メディアやインフルエンサーから日本に関する情報提供依頼や訪日取材への問い合わせが後を絶たない。彼らが的確に情報発信できるために、スペイン人旅行者が主に求める「食事・お酒」や「伝統文化・芸能」などのコンテンツにマッチした観光地の情報を、日本側からスペイン語で提供できるかが鍵となっている。
スペインで注目を浴びる日本。まさにいまスペイン市場へのアプローチは効果的だ。スペイン語での情報発信は、スペインだけでなく、中南米を中心に公用語とする21カ国からの誘致にも汎用できる。日本が注目を浴びる機運を生かし、これまで以上に日本側からのスペイン語での情報発信が期待される。