【日本旅行 23年度重点施策】日本旅行 取締役兼常務執行役員事業共創推進本部長 吉田圭吾 氏 に聞く


日本旅行 取締役兼常務執行役員事業共創推進本部長 吉田圭吾 氏

立ち位置を確立、ビジネスベースに

 ――事業共創推進本部について改めて。

 吉田 2021年1月に始動した部門。新たなビジネスを創造するため、社外のパートナーを探しつつ取り組んでいる。

 われわれが旅行会社としてこれまで培ってきたリソースを生かし新たなビジネスを考えたとき、それは主に「地域づくり」であろうと仮説を立てた。

 地域づくりとは、地域にある魅力的なコンテンツを地域の人たちとともに新たに見つけだす、あるいは創出する、磨き上げることだ。さらにこれらをパッケージ化して広く情報発信し販売する。これらの「プロデュース」を行うことが、われわれが取り組むべきことではないかとおぼろげながら分かってきた。

 また、行政からの施設やコールセンター運営などの受託事業もあるが、そこでも単に施設の運営を行うだけではなく、自分たちのリソースを使い、観光開発しながら旅行商品を造成してお客さまを呼び込む。地元の地域や組織と連携して展開を広げていく。これはほかの業種ではできないリアル旅行会社たるわれわれならではの優位性だ。

 社内にはコロナ禍以前にも地方創生推進部という部署があり、文字通り地方創生についてさまざまな取り組みを行ってきた。通常の旅行業と同時並行で進めてきたのだが、コロナ禍により旅行の仕事がほとんどなくなり、おのずとこれらの事業に力を入れるようになった。

 もともと旅行業は薄利なビジネスで、新たな取り組みで脱却しなければならないと思っていたところだ。それがコロナ禍で一気に進めなければならない状況となった。

 ――地域づくりの事例を挙げると。

 吉田 名前を出すのは控えるが、ある自治体がレクリエーション施設を作り自ら運営していたが、うまくいかずに赤字が続いていた。そこへ当社が指定管理者として運営を受託した。運営するだけでなく、先ほど述べたように誘客に結び付ける事業を行い、実績を上げている。そのような事例がいくつか出てきている。
地域全体を活性化させる取り組みでは、兵庫県の淡路がある。パソナグループが観光や宿泊、飲食施設を整備しているが、観光誘客事業を行う同社のグループ会社にわれわれは旅行会社で唯一出資している。

 もう一つは北海道の大樹町。ロケット射場がある宇宙の町だが、それだけではない取り組みも行っている。牛の糞尿から取ったメタンガスをベースに燃料を作り、その燃料でロケットを打ち上げ、ロケットで運んだ衛星からトラクターを自動制御する、そんな循環型社会を目指している。当社はこれらの取り組みをアピールし、地元の皆さまと一緒にパッケージ化して全国からお客さまを呼び込む。そのための中心的な役割を担わせていただき、事業を進めている。

 自治体が行うふるさと納税に関わる事業にも取り組んでいる。ふるさと納税は自治体にとって事業資金を得る重要な仕組みで、その資金を利用して地域発展の取り組みを行っている。返礼品に当社の旅行に使えるクーポンを使っていただくよう各地に勧めるとともに、自治体と納税者の間に立つ中間事業者としてコールセンターや事務、ふるさと納税拡大へのコンサルティング業務を担っている。既に数カ所で取り組み、納税額を伸ばすなど実績を上げている。

 ――全国の自治体が地方創生に力を入れている。

 吉田 いい観光資源を持っているが、まだ認知されていないところがたくさんある。そのような地域と連携し、活性化を通じて地域への貢献を進めていきたい。

 ――これまでを振り返ると。

 吉田 会社を大きく動かすような利益を上げるまでには至っていないが、着実に実績を上げると同時に、自治体をはじめとした地域との接点が拡大している。

 ――今年度の重点施策は。

 吉田 地域によってわが社の立ち位置が微妙に違う。これをしっかりと確立させビジネスベースに乗せることだ。

 単にお客さまをお送りするだけでなく、さまざまな取り組みで地域の課題解決を図る。当社と連携する地域をさらに増やしていきたい。

 もちろん、今まで取り組んできた純粋な旅行業も地域の課題解決の枠組みに入っている。地域への貢献を送客という部分でも果たしていきたい。石垣島で既に行っているビーチクリーンなどSDGsと組み合わせたツアーや観光人材育成を目指した交流など、社会的意義があるものを考えたい。

 ――旅連との関わりについて。

 吉田 先日、会員の方にお会いして、「地域が盛り上がり、潤うような仕事をわれわれは進めている」とお話ししたところだ。旅行業以外も含めた総合的なファクターで旅連の皆さま、ひいては地域が元気になる取り組みを進めたい。

 旅行では、従来は首都圏、関西圏など発地のお客さまに目が行きがちで、発地のお客さまが望むような商品を作っていた。これからは着地目線で、旅連の皆さまを含めた着地が望む商品を作っていかねばならない。旅行以外の仕事が増え、「旅を忘れた日本旅行」と言われたこともあったが、「旅を使って地域に貢献する日本旅行」でありたいと思う。

 ――旅連の会員に一言。

 吉田 旅館・ホテル、関係施設の皆さまあってこその日本旅行だ。長きにわたり、各地域の皆さまに支えられ、お客さまの旅の思い出づくりをお手伝いさせていただいてきた。3年間続いた歴史的難局から、共に成長軌道へと回復を果たすため、これからより一層の送客をお約束したい。また、それを促すための地域づくりから一緒に携わらせていただけるとうれしく思う。

 

日本旅行 取締役兼常務執行役員事業共創推進本部長 吉田圭吾 氏

 
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