子どもの発想の柔軟さは、大人の固い頭をほぐしてくれるようです。
商店街の中の興味を持った店を訪ね、いろいろな質問をする社会科の体験学習が弊店のある東京都杉並区でも行われています。「地域で子どもたちを育てる」教育の一環でしょうか。日程、学校名、学年などが書かれ、差し支えないところでの対応をするよう、組合事務所から回覧板が回ってきます。
ノートと鉛筆を持ち、数人のグループで店に入って来て、たいてい、女子に促されてごあいさつ。「こんにちは!」。小学校高学年ともなると、女子の方が成長が早いようです。自身の子育て経験からも、思わず納得してしまう光景です。どんな質問が飛んでくるか楽しみでもあります。
「なんでお茶って言うのですか?」
大人の口からは、まず出てこない質問ではないでしょうか。
どう分かりやすく説明するか頭を回転させ、「お茶は昔、中国大陸の南の奥にある雲南省というところから、世界中に広まったといわれていて、陸の路を伝わって来た国々では『チャ』と言うようになったのですよ。例えば、ロシア、モンゴル、チベット、インド、トルコ、朝鮮、そして日本。中国の広東という地方の言葉の影響です。分かるかな? 広東料理って聞いたことある?」
「ボク、食べに行ったことある!」
「海を渡ってお茶が伝わった国々では『テー』または『ティー』と言います。福建語のテという言葉が変化したのです。あなたたちがよく知っている国、イギリス、オランダ、ドイツ、イタリア、スペイン、フランスなどです」
ノートに書きとめる子、うなずきながら見つめる子、反応はさまざまです。
別のグループからは、「なんでお茶屋さんには海苔(のり)が置いてあるんですか?」
順当な質問ながら、目のつけどころがなかなか。
「新茶がいつ採れるか分かりますか。そう、春です。その時期にたくさん仕入れをし、お金を支払います。でも海苔は冬に採れるから、両方をいっぺんに仕入れする準備をしなくていいので、お金の面からも助かるから。それともう一つ、お茶の葉と海苔はどちらも乾燥していますよね。乾(ほ)した椎茸も置いてますよ」
店内を見回し、「ふーん」
お茶屋のこと、少しは身近に感じてくれたかな。