1杯のお茶が心をなごませ、人と人との間に和をもたらす。日本茶の持つチカラです。そんな素晴らしいお茶を多くの人にもっともっと知っていただきたい、その願いを込めて、日本茶にまつわるできごとをまとめてみました。「日本茶っていいな!」と、思っていただければ幸いです。
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急須に、日本茶と湯を入れて、少し待つ。1分後のお楽しみは煎茶。3分後のお楽しみは玉露。
スピード、簡便性も必要ですが、それだけでは、あまりに味気ない…。手間をかけてこその、ゆとりのひととき。待ったこその、お楽しみ。
気持ちが落ち着かず荒れたとき、疲れを感じたとき、深呼吸してゆったりと、お茶を淹(い)れてみませんか。きっとお茶は、あなたを癒やしてくれるはずです。
「喉が渇いたら水を飲め。心が渇いたら茶を飲め」
どなたの名言でしょうか。
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料理のおいしさを決める味の一つである「うま味」。甘味、塩味、酸味、苦味に次ぐ第5の味として、「UMAMI」は世界共通語となっています。
約百年以上前の、1908年、池田菊苗東京帝国大学教授が、昆布からうま味の成分である「グルタミン酸」を世界で初めて抽出し、その4年後に開催された国際応用化学会で、「5番目の味覚」であると発表しました。その後、1913年に、小玉新太郎氏がかつお節のうま味成分がイノシン酸であることを発見、1957年には、国中明氏が、グアニル酸がうま味を有すること、後にこれがシイタケのうま味成分であることを確認しました。いずれも発見者が日本人であり、「UMAMI」という言葉が世界で通用するとは、誇らしいことです。
欧米では、長い間、味覚としてのうま味の認知度は低かったようですが、多くの研究者がうま味の研究に参加するようになり、1985年にハワイで開催された国際シンポジウムで、基本の味としての「UMAMI」が公式に認定されました。1990年代後半からは学会だけでなく、各国のシェフたちが日本料理の「だし」に注目し始め、和食ブームへとつながっていきます。
40年以上も前の学生時代、アメリカからの留学生を交えてのゼミ旅行で、宿での食事の際、刺身、生卵、煮物、おすましなどの和食を前にして、留学生がなんとも奇妙な顔をしていたことを思い出します。「食べてみてごらん。おいしいから」といくら勧めても、「気持ちとしては食べてみようかと思うけど、私の脳が『これは、生だ、生だ』とささやくから無理。それにこのスープ、生臭いからとても飲めない。それにお茶も魚みたいな臭いと味がする」と。
確かに、「だし」はうま味の他に香りも強い。香りは民族性や郷土色が強く、後天的な趣向に左右されるとの説があるのを考えれば、和食ブームのはるか以前のことでもあり、しごく当然の反応だったのでしょう。あのときの彼女は今でも日本食が苦手なのかしら。それともだしのうま味、日本茶のおいしさが分かるようになっているのかしらと、ふと心に浮かぶことがあります。