「四番茶下さい。カテキンがいっぱいのお茶!」と、お客さま。
「何かテレビ放映があったのでしょうか? 残念ながら、四番茶まで摘んでいる畑は最近ではあまりないと思いますが。一番茶のことを新茶と言うのはご存じかと思います。それから40日ぐらいたって6月ごろ、二番茶を摘みます。太陽の光をいっぱい浴びて葉っぱにカテキンがたくさん含まれているお茶という意味なら、こちらの二番茶はいかがでしょうか。熱湯で淹(い)れるとカテキンがよく溶け出しますよ。お手持ちのお茶でも、熱湯で淹れるとカテキンは十分に口に入るはずです。葉っぱに含まれる量と急須で淹れて湯に溶け出す量は比例しないと思いますが、いかがでしょう。柔らかい葉っぱからは溶け出す割合は多いのではないでしょうか?」
あるときは、「玉露の茎茶を下さい。記憶力がよくなるお茶!」とお客さま。マスコミ報道によるのでしょう。
「こちらは、玉露特有の甘味のあるお茶です。玉露の風味はお好きですか?」
その数日後、駅ビルにある茶店の透明ケースの中の茎茶(煎茶の茎)がごっそり減っているのを見て、報道内容に対する受け止め方の違いとその影響力に驚いたしだいでした。
まだまだ続きます。
「掛川の深蒸し茶ありますか。静岡の掛川産!」
それに対しては、
「掛川での大規模な調査結果を放送していましたが、掛川産だけに健康効果があるのではなく、お茶自体にさまざまな有効成分があり、日々飲み続けることでより健康に寄与すると科学的にも証明されていますが…。ご用意がなく、お役に立てずに申し訳ありません」
最近では、「煎茶のパウダー、水にもお湯にもすぐに溶けるやつ。抹茶じゃなくて、煎茶の粉末が欲しい」と、通常在庫では対応しがたくなるほどでした。
健康情報があふれる昨今、それにすぐ反応する人々。
平和なればこその風景でしょうが、熱しやすくさめやすい風潮に危うさを感じてしまいます。