これぞ「究極の日本茶」と断言できるお茶を、私は知りません。存在するとさえ思っていません。なぜなら、人それぞれ「味覚と心の持ちよう」が違うからです。
ただ「深い味わい」と「くつろぎ」を提供できる飲料の一つが、日本茶であるとの確信はあります。「あー、おいしい」と心からほっとし、ゆとりのひとときを過ごしていただける茶業にたずさわれるのは、幸せなことです。
日本茶、紅茶、コーヒーの水出し方法は同じようにありますが、湯温の変化による味わいの違いを楽しめる飲み物が、日本茶の他にあるでしょうか。ぬるめに淹(い)れたまったりとしたお茶に癒やされ、熱くてきっぱりとした苦渋いお茶でシャキッとする。そのどちらにも対応できる柔軟さが、日本茶にはあります。
一方的な価値観だけで判断し、レッテルを貼り、物事や人を区別する傾向が強まっている風潮に、茶々など入れたい心境です。
「そろそろ、お茶にしませんか」。
テアニンの力を借りて、心を穏やかに、そして頭を柔らかくいたしましょう。
※「素敵なお茶生活」は今週号で終了いたします。