【本だな】鉄道ダイヤ探究読本


 河出書房新社は7月24日、「鉄道ダイヤ探究読本」を発売した。

株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、井上孝司著『鉄道ダイヤ探究読本』を2024年7月24日に発売します。

 

ダイヤグラムには、驚きの創意工夫が満載!

「電車を見て時計を合わせることも可能」ともいえるほど、世界一の定時性を誇る日本の鉄道。この正確さはどのようにして実現されているのか――列車ダイヤの成り立ち、作り方、働く人々について詳細に解説していきます。

 

運行する線区ごとに24時間の全列車の運転がひと目でわかるように、横長の紙に書き表した図表(列車運行図表)のことを「ダイヤグラム」といい、略して「ダイヤ」と呼びます。鉄道ダイヤの「ダイヤ」とはこのことを表します。運転時刻や列車番号などの運行計画を、一枚の図表に見やすくしたものです。

著者作成の根室本線(JR北海道)のダイヤグラム

縦軸は「駅名」、横軸に「1分刻みの時刻」などの目盛りがあり、列車ごとに各駅の到着・出発・通過の時刻を線で結んであります。これを「列車線」とも呼び、運輸関係者のあいだでは“スジ”と呼ぶ場合もあります。一方の方向に走る列車の線が右上がりですと、反対方向に向かう列車は右下がりのかたちとなり、あらゆる運転状況がつかめますので、運転に欠かせない大切な図表です。

 

このダイヤグラムをよくよく見ていくと、実はさまざまな「鉄道の不思議」が解けていきます。作成者の知識と工夫と思いが余すところなく盛り込まれたダイヤグラムは、その秘密を知るほどに「あの時刻表には、こんな狙いがあったのか」と、驚嘆すること必至です。

たとえば、

・自社の遅延を他社へ波及させない手法とは?

・特定の列車への乗客集中を防ぐアイデアとは?

・「待たされている気」にさせない工夫とは?

・輸送力の増強が一筋縄ではいかない理由

・施設や配線に合わせたダイヤづくりの妙 ……などなど

本書では鉄道にまつわるさまざまな疑問を、ダイヤグラムから解き明かしていきます。

 

■ダイヤグラムを読み解けば、鉄道の楽しみがもっと広がる! ——「はじめに」より

鉄道において、「線路」は列車を走らせるためにあるが、その線路に、どのように列車を走らせるか――すなわち「運行計画の策定」は、鉄道事業社にとって「商品」の出来を左右する問題となる。

 

鉄道事業は、煎じ詰めると「人や貨物を、より早く、より効率的に移動する」事業だ。だからこそ、それを実現する手段となる車両と運行計画こそが重要になる。しかし、理想どおりの運行計画を策定するのは簡単ではない。線路の配線、地形、気候条件、あるいは手持ちのリソース(人や車両など)といった制約があるからだ。だから現実的には「妥協の産物」とならざるを得ない部分が多い。

 

鉄道のダイヤについて取り上げる本では、運行計画の土台となる列車運行図表(ダイヤグラム)、そして列車運行図表を作成するための材料や、プロセスにかんする原理原則についての話は欠かせない。それは本書も同様だが、さらに、実例や筆者の実体験を取り上げるように工夫してみた。そうすることで「あれは、こういうことだったのか!」と理解を深めていただけることだろう。

 

■本文より

 

■目次より

[1章] ダイヤグラムの基本を知る

・路線ごとにつくられる「列車運行図表」とは

・列車運行図表における「列車の分類」とは

・「番号」で列車を区別する

・辞書とは意味が異なる「列車」「車両」「機械」

[2章] 「精緻なダイヤ」はどう、つくられるか?

・ダイヤ作成者を悩ませる輸送需要と輸送力の関係

・利便性に優れた「スジ」の引き方

・「使いやすいダイヤ」と「使いにくいダイヤ」の違い

[3章] 正確な所要時間を導きだすプロセス

・出発〜停車の所要時間を算出する

・始発〜終着の所要時間を算出する

・所要時間を短縮するための工夫

[4章] スピードアップと効率を両立させるワザ

・スピードアップを達成するための手法

・効率的な急行運転を実現する方法

・利便性の高い急行運転を実現するアイデア

・列車種別の名称はどう決められている?

[5章] ダイヤ作成の現場は苦労がいっぱい

・ダイヤの作成に縛りをかける要因

・時間帯、季節、イベント…需要の増減に対応する

・区間ごとの需要の増減に対応する

・「直通運転」と「系統分断」の関係

[6章] スジを引くだけでは列車は走らない

・車両の運用はどのように決められる?

・車両運用の行路と順序を知る

・車両基地の出入庫と回送

・車両基地にも綿密な運用計画が必要

・車両と同じにはいかない乗務員の運用

[7章] ダイヤの乱れと運転整理

・「ダイヤ乱れ」はなぜ、起きてしまうのか?

・遅延の波及を食い止める方法

・遅れを取り戻し、ダイヤを回復させる方法

・ダイヤの回復のみでは、「通常運行」とはいえない

[鉄道ダイヤこぼれ話]

・「運行頻度が高ければよい」とは限らない

・500系とN700系の性能の違い

・共通運用に求められる配慮

・運転停車が招いた「能生騒動」

・判断が難しいJR東日本の新幹線

 

■著者紹介

井上孝司(いのうえ・こうじ)

1966年、静岡県生まれ。99年にマイクロソフト株式会社(当時)を退職して著述業に転じる。現在は、得意の情報通信系や先端技術分野を主な切り口として、鉄道・航空・軍事関連の著述活動を行なっている。著書は、『図説 鉄道配線探究読本』(小社刊)のほか、「『配線略図で広がる鉄の世界』『車両基地で広がる鉄の世界』『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』(以上、秀和システム)など多数。『新幹線EX』(イカロス出版)をはじめ、雑誌への寄稿にも注力している。

 

■書誌情報

書名: 鉄道ダイヤ探究読本

著者: 井上孝司

仕様:四六判/並製/224ページ

初版発売⽇:2024年7⽉24日

定価:1595円(本体1450円)

ISBN:978-4-309-29417-9
装丁:スタジオ・ファム

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309294179/

出版社:河出書房新社


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