往事のにぎわい遠い DCで三陸の底力を
千年に一度と言われる未曽有の大災害、東日本大震災発災から今年で10年がたちました。
岩手県の沿岸部は国内有数の豊かな漁場とリアス式海岸の美しい景勝地が自慢でした。しかし、地震直後の大津波は町も漁港も全てをのみ込み、その当時は果たして復興にどれほどの時間を要するものか、営業再開のめどは立つものなのか、と途方に暮れていたことを思い出します。
現在、世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症の終息も先の見えぬ状態が続いている中で、慰霊祭はどの地域も関係者のみの最小規模に縮小して挙行するようです。10年の節目としては寂しい限りです。
この10年で県内からの人口流出は加速し、観光業の労働力不足が課題となっています。沿岸地区では防潮堤が張り巡らされて、観光の目玉である陸中海岸国立公園・三陸ジオパークをはじめ、教育旅行の一環にもなる震災の教訓を学ぶツアーなど集客を行っているものの、往時のにぎわいにはまだ少し遠いか。しかし、沿岸各地区では地域住民の努力により復旧した三陸鉄道とともに特色ある地域興しを展開しています。
コロナ禍で旅行形態が様変わりしても浜の温かいもてなしは変わりません。ラグビーワールドカップで見せた三陸の底力は今年の東北デスティネーション(DC)でも十分発揮されるでしょう。
内陸も沿岸とのコラボを積極的に行い、食や文化を県一丸となってPRしていく必要があります。岩手県北と北海道、青森、秋田の縄文遺跡群がユネスコ世界文化遺産に名乗りを上げていますが、インバウンドが再開した後に大きく期待が持てる素材です。
景勝地や桜や紅葉を愛でる他にも、世界に誇れる遺産を正しく理解し、国内外に発信していきたいと思います。岩手県の組合として、変化に対応できる強い宿作りを応援します。
(湯守 ホテル大観)