【焦点課題】びゅうトラベルサービス 代表取締役社長 森崎鉄郎氏に聞く


森崎社長

コロナ禍で組織刷新の狙い

販売機能、店舗機能の変革加速

観光流動創造会社として存在感

 ――足元の動向は。

 「新型コロナウイルス感染拡大の影響後は厳しい経営状況が続いているが、昨年度の第3四半期はGo Toの効果もあり黒字を計上できた。今後、生産性の向上を含めたコストダウンを行い、一定程度の移動需要が戻ることを前提に黒字を目指していく」

 ――7月1日に組織を刷新したが狙いは。

 「びゅうトラベルサービス(VTS)が発足以来、『旅とサービスを通じてお客さまの人生を豊かにすること』『地域の活性化に貢献していくこと』を社員全員が理念として持ち続けている。With/Postコロナ時代を迎え、経営環境が一変したが、大切にしてきた思いや理念を変えずに価値を向上し、選ばれる会社とならなければならない。その実現のため来年4月に向け『販売機能の変革』『店舗機能の変革』の二大変革を進めているが、社内外への変革のメッセージを伝えるとともに、その総仕上げを加速するものとして、今回組織改正を実行した」

 ――刷新での目玉は。

 「従来の営業企画本部の再編だ。来年4月以降の中核商品となるダイナミックレールパック(DP)の企画造成や、Web販売戦略の全般を担うなど、販売機能の変革を推進する象徴的な部署としてダイナミックレールパック本部を新設した。同4月にびゅうプラザから移管が終わる『駅たびコンシェルジュ』(25カ所設置)の立ち上げ、業務支援を行い、店舗機能の変革を推進する業務管理本部とともに、二大変革を担うこととなる。また、同じく営業企画本部の再編として、自治体やDMOなど地域組織と連携を強化し、地域戦略を推し進めるツーリズム推進本部を設けた。このほか、経営体制の強化として経営企画本部、地方機関である東北・北海道統括支社を新設している。変革のための組織をしっかりと作り上げ、社内外にWith/Postコロナ時代に適応していくことをメッセージとして発信する」

 ――今後変わることは。

 「大きくはダイナミックレールパック本部によるWeb販売の拡大だ。旅行業界自体がWebシフトしているが、VTSならではの存在感、個性を出していく。われわれの特徴としては、旅館・ホテルだけでなく新幹線など鉄道にもダイナミックプライシングを適用し、組み合わせができること。さらにそれを共通在庫システムとの連携で行うことが強みである。今後は、Webマーケティングを強化し、商品の認知度、顧客の興味、関心、購買行動といった一気通貫した旅行に出発するまでの流れを活性化する施策を重要視して取り組んでいく。ツーリズム推進本部は全体的な営業戦略を立案する組織となる。また、大人の休日倶楽部の会員をターゲットに安心安全な旅行を提案することはもちろん、JR東日本グループならではの地域を意識した観光素材を取り込むなど、旅行という移動の価値を高めていく。今後も東日本エリアでリーダーシップを取りながら、地域と一緒に新たな魅力の発掘、商品化、情報発信、販売などに取り組んでいく」

 ――今後のJR東日本グループ内での役割は。

 「観光のための移動欲求は、ワクチン接種の拡大に伴い旺盛になるはずだ。東日本エリアには、東北、上信越といった四季、食、体験の要素を多く持つエリアがある。われわれは、そうしたデスティネーションにリアルに移動する価値のあるものを提供できる観光流動創造会社を目指す。JR東日本グループが持つ広域な鉄道ネットワークは必ず武器となる。また、各地にはグループの社員がリアルで働いている。地域とのつながりなどグループの強みを生かし、移動する価値を向上する役割をわれわれは担わなければならない」

 ――今年度の目標は。
 
 「第1四半期は緊急事態宣言が発令、延長されるなど旅行、移動需要に大きな影響があった。今はコストダウンや雇用調整助成金などでしのいでいるが、7月以降は、特に大人の休日倶楽部ジパング会員である65歳以上のワクチン接種が順調に進んでいることから、移動再開時の需要を獲得していく。また、昨年同様にGo Toにも期待したい。冬になれば、われわれは、他社と異なり若い人が動くスキー商品という大きな武器も持つ。ガーラ湯沢をはじめとした日帰りスキーのオンライン予約を活性化させるなど、下期から19年度比の需要回復を目指していく」

 ――中長期の展望は。

 「22年度以降は、新DPや駅たびコンシェルジュという新業態をしっかり定着させることで数値目標を着実にクリアしていく。6月27日にはJR東日本のWebサイト『えきねっと』が大幅リニューアルされた。来年3月にはここにDPも加わることになる。えきねっとによる顧客の囲い込み、JREポイントの連携など、グループ全体の強みを生かしたポイントネットワークも使った経済圏の中に観光流動創造会社として鉄道旅行商品、将来的にはインバウンド対応サービスを提供するなど、存在感を発揮していきたい」

もりさき・てつろう=1990年にJR東日本に入社。盛岡支社営業部長、東京支社びゅう事業部長、鉄道事業本部営業部次長などを歴任し、2019年7月から現職。

【聞き手・長木利通】

 
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