選ばれるブランドへ
地域密着型のホテル展開 2023年までに全60棟を計画
――世界最大のクチコミプラットフォームを運営するトラストユーの日本代表を2015年から務め、今年2月にミナシア(東京都千代田区)の代表取締役社長に就任された。
「ミナシアは、主にホテル、レストランの企画、運営、コンサルティングを行う会社。『ホテルウィングインターナショナル』チェーンを中心に全国でホテル37軒、レストラン10軒を展開している。従業員数は936人で、全日本シティホテル連盟に加盟している」
――37軒のホテルは自社で所有し、運営しているのか。
「1990年にホテルウィング1号店を開業。以前は数ホテルを所有し、直営していたが、現在は受託運営を増やそうとしている。フォーブスという旧社名を20年4月にミナシアに変更。新社名には『みんなが幸せに』という思いが込められている。『ひとりを笑顔に、世界を笑顔に。』を経営理念に、『その街に永く愛される”ランドマーク”をつくる』を経営目標に掲げている。地域密着型で、ゲストがまた来たいと思う第2のわが家のような温かみのあるホテルの全国展開を目指している」
――ホテルウィングインターナショナルの運営方式にはどのような形態があるのか。
「オーナーの要望に応じて3種類の提案を用意している。まず、オーナーと不動産賃貸契約を結び、当社がテナントとして運営する『リース方式』。この場合、オーナーは安定した家賃収入を得ることができる。次に、オーナーと運営委託契約を結び、当社が運営を行う『運営委託方式』。売り上げに連動した一定率の運営委託フィーを当社が受け取る。オーナーは売上最大化と経費節減のインセンティブを得ることができる。『フランチャイズ方式』では、オーナーが自ら運営を行う。当社は、運営ノウハウや、最適なハードの整備や設計、オペレーションサポートを行い、売上に連動した一定率のフランチャイズフィーを受け取る」
――現在一番多い契約形態は。
「リース方式が多い。各オーナーに家賃保証をしているので、コロナ禍で当社が受けた打撃は大きい。今後は運営委託方式の比率を上げていきたい」
――今後のホテル展開計画は。
「21年に5~6棟を開業する。23年までに全60棟にする計画だ」
――鉄道、国内ホテル、外資ホテル、外資OTA、国内OTA、トラベルテックなどで観光業界の最先端のマーケティングに携わってこられた。これらの知見を今後のホテル経営にどのように生かしていくのか。
「東急ホテルグループとソラーレホテル&アンドリゾーツのホテルチェーン再編とブランド戦略を過去に担当した。OTA等では旅行・観光のオンラインマーケティングも行ってきた。これらの経験が生かせると思う。ある外部機関が発表したホテルブランドの認知度調査で、ホテルウィングインターナショナルの認知度はわずか23%だった。圧倒的にブランド力が弱い。前職のトラストユーはレピュテーション(評価)マーケティングを行う会社だが、レピュテーションマーケティングとブランディングは表裏一体の関係だ。自分たちがブランドを通じて伝えたいことが利用者に伝わっているかどうかを判断する目安の一つが利用者のクチコミ、評価になる。『選ばれるホテルブランド』を実現する」
――具体的には。
「先ほど申し上げた経営目標の『その街に永く愛される“ランドマーク”をつくる』を推進していく。私たちはフルサービスホテルではなく、宿泊特化型に近いリミテッドサービスホテルだが、その枠組みの中でも、地域密着に徹底的にこだわっていく。各地域の工芸、お菓子、食材、料理、酒などを体感できるようにする。3月15日に開業した『ホテルウィングインターナショナルプレミアム京都三条』は、外観に日本瓦と木目調の縦格子を採用し、京町屋のイメージを演出した。4月1日に開業する『ホテルウィングインターナショナル飛騨高山』には温泉大浴場を設置する」
しもじま・かずよし 1970年4月生まれ。慶応大学法学部法学科卒業後、東急電鉄に入社。ホテルの現場や海外事業部、グループ政策室に勤務。2004年ソラーレホテルアンドリゾーツ・マーケティング本部長、08年オクトパストラベルジャパン代表取締役、10年アゴダインターナショナル日本代表、11年楽天トラベル国際事業副部長、13年グルーポンジャパン・トラベル事業本部長、15年トラストユー(TrustYou)代表取締役を経て21年2月から現職。
【聞き手・江口英一】