会社初の女性役員に就任
皆がスムーズに働ける職場環境の整備が必用
――100年を超す会社の歴史の中で、初の女性役員という。当人の感想は。
「とても驚いた。今の部署の部長になったのは2016年。その時も驚いて、正直言ってその先があるとは思っていなかった。入社の時は海外団体旅行専門店という、法人に海外団体旅行の営業をする部署に配属されたのだが、法人営業を新卒の女性が行うのも私の代が初めてだった。振り返ると、いろいろなことが初めてづくしだった」
――会社が今年度の取り組みの柱に「グローバル戦略」とともに「ダイバーシティの推進」を挙げている。勤務体系の柔軟化など、女性が働きやすい環境づくりを進めるというが、この点については。
「私自身、子どもが2人いて、2度、育児休暇を取った。上の子はもう社会人2年目。以前から会社には休暇も含めてさまざまな制度があった。今回、改めて文字にしたということは、今から何か新しいことを始めるというよりは、会社に綿々と伝わる制度をうまく利用しようという会社からのメッセージだと思う。他社と単純に比較できないが、私のような者がここまでやってこられたのは、人情味があるこの会社にいたからこそかもしれない(笑い)」
――現在の部署(国際旅行事業本部海外営業部)のミッションは。
「国際旅行事業本部はいわゆるインバウンドの部署。その中で海外営業部は、海外の旅行会社と取引をする部署だ。海外の旅行会社が日本へのツアーを組む際、宿泊施設や交通機関の手配をする、ランドオペレーターの役割を担っている」
「需要の高まりを受けて、昨年から団体旅行と個人旅行の二つの部署に分けた。団体については訪日全体のシェアと異なり、欧米からのツアーが以前から多い。そちらについては引き続き品質の良い手配を行うとともに、日本へのツアーを設定したいという旅行会社がまだ世界にたくさんあると思うので、そういったところに営業をして、取り扱いを拡大したい」
「個人についても世界中さまざまな旅行会社から依頼を受けて手配をしているが、お互いに効率的に仕事をしなければ長続きしないので、人が介在するやり方と、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)やシステムを使うやり方の両方で仕事を進めている」
「5年後、10年後を見据えて、取引先がいずれ先細るかもしれないという危機感を持っている。それを今風の言い方だが、いかに『持続可能』にするかが私のミッションの一つだ。世界の旅行会社が今、何を求めているのか、何を目指しているのかをヒアリングしつつ、取引先を拡大する」
――欧米に強いというが、ターゲットはアジアか。
「人口が増え、所得も上がっているので有望な市場だ。当然、力を入れる。双方向で人を送ったり、第三国から人を送ったりと、関係を構築したい」
――国により、求める品質が異なるだろう。
「ヨーロッパと一口に言っても、当社では26カ国と取引がある。国ごとにニーズが違ったり、同じ国でもエージェントごとに取り扱っているお客さまのタイプが違ったりする。宗教的な問題で食べられないものもある。食事やコース設定など、きめ細かい対応が必要だ。うちの部署には代々伝わる裏メモがあり(笑い)、それに基づいて対応をしている。宿泊施設の方々に教えていただくことも多く、感謝をしている」
――後進の女性社員に向けて。
「取引先の海外の旅行会社は女性の決定権者がものすごく多い。日本でも女性にもっとリーダー的なポジションに就いてもらいたいという思いはある」
「女性はライフステージの中でさまざまな変化が出がちで、仕事を続けるのが難しいケースもある。男女問わず、皆がスムーズに働けるような職場環境の整備が必要だ。皆がやりがいと楽しさをもって、仕事ができるようになればいい。若い人たちもやりがいは人から与えられるものではなく自分で見つけるものだという意識をもって、日々アンテナを高くして仕事に取り組んでほしい」
【聞き手・森田淳】
緒方氏