【焦点課題】農協観光 社長  清水清男 氏に聞く


清水社長

コロナ渦の取り組み

雇用維持と事業継続を 協定施設とは強く連携

 ――新型コロナウイルス禍の中での社長就任です。

 「観光産業に対するコロナの影響は極めて大きく、需要と供給、両方がなくなった。当社も存亡の危機にあり、厳しい環境下での就任だが、感染防止を徹底し、雇用の維持と事業の継続を最優先に取り組んでいく。嘆いていても事態は改善しない。危機から生まれるニーズを捉え、創造性をもって対応していく」

 ――どんな影響が出ていますか。

 「JAグループの旅行会社であり、国内では農家の方々の団体旅行を主力としているが、感染を避けるため、団体・グループの旅行を取りやめる動きに加え、国民全体が移動を自粛した。このため、確定値ではないが、4~9月の取扱額は約25億3千万円にとどまった。前年同期は約275億円であり、大きく落ち込んでいる」

 「今年度は中期経営計画の2年度目に当たるが、計画自体が現状にそぐわなくなっている。このため、経営再生計画に組み替えることにした。今年度はその準備期間と位置づけている」

 ――当面の課題はなんでしょう。

 「事業資金の確保や減量経営への転換などだ。店舗の統廃合を進め、1都道府県1店舗体制を目指す。現在、全国に87店舗あるが、50程度にする方針だ。われわれは人と人をつなぐ総合余暇産業を目指しているが、いまや利用者がダイレクトに航空や鉄道会社とウェブで予約や旅の手配をする時代になった。旅行プラスアルファの『ハイブリッド型』の経営にかじを切らなければ取り残されてしまう。物事をゼロベースで考え、企業文化の変更もしつつ、デジタル化を加速するしかない」

 ――Go To事業の手ごたえは。

 「開始当初は個人・小グループ客の利用が多く、需要回復感は薄かったが、9月の連休を境に人の動きも活発になってきた。自治体独自の観光支援策も追い風となり、底を脱しつつあると思う」

 「清潔、安全安心な『ふれあいの旅』をアピールしているが、特に、マイカー収穫体験ツアーや旅館貸し切りプラン、チャーター機による遊覧ツアーなどの反応がいい」

 ――「ウィズコロナ」といわれる中、今後の事業展開は。

 「個人・小グループ化で団体旅行を取り巻く環境は厳しいが、JAグループの旅行会社として、受注型企画旅行、およびJA主体の募集型企画旅行を中心とした団体旅行の強化に取り組む。お客さまに笑顔で参加いただけるよう感染予防対策をしっかり実践し、安全安心な旅行を提案していく。同時に、一般市場に向けた団体営業への挑戦も引き続き行っていく」

 「JAは地域密着の業態であり、当社も地域に根ざした旅行会社に軸足を置くべきだ。農村と障害者、企業を結び付ける農福連携事業や農家の事業継続をにらんだ結婚仲介事業など、旅を介在した農業支援を打ち出していきたい」

 ――厳しい状況下、社員に望むことは。

 「事業を伸ばすため、コロナ禍前と後の現実を直視すること。既存のやり方ではなく、営業戦略を大きく変えていってほしい。人はわが社の経営資源。お客さまの喜ぶ姿を求め、(1)社会のためになるのか(2)お客さまのためになるのか(3)社員、スタッフのためになるのか(4)会社組織のためになるのか―の四つの問いをもって取り組んでほしい」

 ――農旅連やみのり会など、協定施設に期待することは。

 「最も重要なビジネスパートナーだが、いまかつてない経営危機に立たされている。20年度はすでに80近い協定施設が閉館や自主閉館に追い込まれている」

 「事業領域の拡大には地域を深く知るビジネスパートナーとの連携は欠かせない。協定施設の皆さんとは今まで以上に強く連携し、当社と地域の特性発揮に協力いただきたい」

 「旅館を活用した地域づくり、例えば(1)顧客のライフスタイルや価値観に合わせ、旬の農産物を届ける(2)オンラインで料理人による料理教室の開催(3)まち歩きツアーの配信―などに取り組んだり、ワーケーションなど新しいニーズへの対応、施設の有効活用も模索してほしい」

しみず・きよお 1980年4月全国農協観光協会入会。2017年6月から同協会代表理事専務。農協観光では東京支店長、総務部人事教育課長、経営企画部長、常勤監査役など歴任。2020年6月社長就任。62歳。

【聞き手・内井高弘】

 
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