【特集 専門紙の視点で見る群馬県前橋市の「デジ田」】「自然とアート」目玉に スローシティの取り組みも 観光経済新聞


山頂に湖水をたたえる日本百名山の一つ、赤城山

 県内でも上位の年間627.2万人(令和4年)の入込客(観光客、ビジネス客)がある前橋市。市の基本計画「第7次前橋市総合計画」(令和9年度までの10カ年計画)でも、「地域資源を活(い)かした新たな観光振興」に取り組むことを柱の一つとしている。

 同市で最も知られる観光地の一つは日本百名山にも選ばれる赤城山だ。標高1828メートルの黒檜山を主峰に、駒ケ岳、地蔵岳、荒山などの外輪山からなる複成火山。豊富な登山コースがあり、初心者、上級者問わず楽しむことができる。山頂にあるカルデラ湖・大沼はキャンプやボート、ワカサギ釣りなど、さまざまなレジャーが楽しめる。県は一帯のさらなる活性化に向けた整備計画の策定に着手。市内観光の今後の目玉として期待が寄せられている。

 「前橋初市まつり」「前橋七夕まつり」「前橋花火大会」「前橋まつり」と、「前橋4大イベント」と称される四つの大きなイベントが市内で開かれる。

 前橋初市まつりは400年前の江戸時代から伝わる新春の恒例行事。だるまや縁起物を販売する市が市内中心部の通りに軒を連ねる。毎年1月9日の開催。

 前橋七夕まつりは北関東最大級の七夕まつりで毎年7月上旬の開催。市内中心の商店街に絢爛(けんらん)豪華な七夕飾りが飾られる。

 前橋花火大会は市内を流れる利根川の河川敷で約1万5千発の花火を打ち上げる県内最大の花火大会。毎年8月第2土曜日の開催。昭和23年、戦後の復興を祈願する祭りとして開かれ、さまざまな経緯を経て現在に至っている。

 前橋まつりも昭和23年の戦後復興祭が起源。みこしや山車が市内を練り歩くほか、平成7年からは若者らによる創作踊り「前橋だんべぇ踊り」が登場し、場を盛り上げている。毎年10月上旬に2日間開催。

 赤城山南麓の宮城地区は桜の名所として有名。3.5キロの道路沿いに約1400本、公園(みやぎ千本桜の森公園)内に約500本のソメイヨシノなど桜の木が植栽されている。開花する3月下旬から4月上旬は「赤城南面千本桜まつり」が開催。毎年10万人以上が観賞に訪れる。

 今年3月は国道17号線バイパス(上武道路)沿いに県内最大級の道の駅「道の駅まえばし赤城」がオープン。約7万平方メートルの広大な敷地内に農畜産物の直売所、地産レストラン、温浴施設、観光案内所を装備。市は同施設を赤城山観光の拠点、前橋の新たな玄関口として最大限に活用したい考えだ。

 前橋市は平成29年、世界的なネットワーク「スローシティ国際連盟」(本部=イタリア・オルビエート市)に国内で宮城県気仙沼市に次いで2番目に加盟。「地域の食や農産物、生活、歴史文化、自然環境を大切にした個性と多様性を尊重した街づくりを目指す」というスローシティ運動に取り組んでいる。

 観光面でもスローシティをテーマに「前橋に残る歴史や風土や文化、前橋でしか味わえないものを磨いてコンテンツとし、外から来たお客さまに提供したい」という。

 詩人・萩原朔太郎の出身地でもあり、アートをテーマにしたまちづくりにも力を入れる同市。市内には近代美術を中心とした作品を展示する「アーツ前橋」が平成25年、ギャラリーや店舗が入居する複合施設「前橋ガレリア」が今年オープンした。

 300年の歴史を持つ老舗旅館をリニューアルし、令和2年にオープンした白井屋ホテルは、著名な芸術家らが客室をデザイン、館内にさまざまなアート作品を展示する国内でも珍しいアートホテルとなっている。

 これらアートの施設は全て市内中心市街地エリアにあり、同市は赤城山の自然とともに市街地のアートをテーマにしたツーリズムに力を入れる方針だ。

(観光経済新聞)


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