観光庁は、観光地域づくり法人(DMO)の安定的な運営資金の確保に関する手引きとして「DMOにおける自主財源開発手法ガイドブック」を作成した。自治体は公共事業の実施によって特別な利益を受ける受益者に対して事業費用の負担を求めることがある。徴収に強制力はあるが、税金とは異なる。この仕組みを「受益者分担金・負担金」として紹介する。
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従来は下水道整備などのインフラ整備事業や都市開発事業での適用が一般的だったが、近年、この仕組みを観光振興事業に置き換え、地域の発展によって利益を享受する観光事業者などを受益者と捉えて活用しようという動きが出てきている。
米国、英国などでは、このような仕組みがBID(Business Improvement District、産業改善地区)やTID(Tourism Improvement District、観光改善地区)として普及しており、日本でも導入を検討する地域がある。
■仕組み
まず日本の公共事業などで使われている受益者分担金・負担金を確認する。例えば、ある地域の一区画で都市開発事業や下水道整備事業が行われる場合、利便性が高まり、土地の価値が上がることが想定される。土地所有者や地上権者などは利益を受ける受益者といえる。受益者分担金・負担金は受益者に対し、自治体が事業費用の負担を求める制度で、税制度を補完する仕組みとして活用されている。
受益者分担金と負担金はよく似ているが、法的な根拠は異なる。受益者分担金は、地方自治法を根拠とし、特定の事業の経費に充てるために自治体が受益者から受益の範囲内で徴収するもの。受益者負担金は、地方財政法、都市計画法などの個別法を根拠とし、国、地方公共団体が特定の受益者から徴収する。都市計画事業などで利益を受ける受益者がいれば、利益の範囲で事業費用の一部を負担させることができる。
■観光財源としての受益者分担金・負担金制度
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