世界が評価した庭園、雰囲気ある離れも
山梨県甲府湯村温泉の常磐ホテルは昭和4年の創業以来、国内外の多くの賓客を迎えている「甲府の迎賓館」。今上天皇や多くの皇族が宿泊された皇室ゆかりの宿でもある。
同館の名声を一層高めているのが庭園。米国の日本庭園情報誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」が選ぶ「日本庭園ランキング」で平成25、26年と連続で3位に選ばれるなど、国内外で高い評価を得ている。広さは約3千坪。朝9時から夕方5時まで開放しており、宿泊客はチェックインのあと、ゆうげの前のひと時などにゆっくりと散策を楽しめる。
庭園には高松宮さまが昭和23年に来館された際に手植えをした栗の木、作家の山口瞳氏がこよなく愛し、小説「花梨の庭」にも登場させた花梨の木、仲間とともに訪れ、昼から木の下でワインをたしなんだという文豪井伏鱒二氏ゆかりのケヤキの大木と、エピソードは枚挙にいとまがない。
◇ ◇
ホテルの歴史をひもとくと、昭和19年の梨本宮さまから、実に30回を超える皇室の方々の宿泊記録が残っている。昭和天皇は同22年から3回、今上天皇は皇太子時代の同51年から4回、離れの「貴松亭」「松風」や西館洋室に宿泊された。
離れの客室は庭園を囲む回廊に7棟、11室点在する。いずれも日本建築の粋を凝らした数寄屋造りの雰囲気のある建物。ここから眺める庭園は宿泊客だけの特別な景色だ。
皇室ゆかりの2室のほかは、囲碁や将棋の「番勝負」で使われる「九重」、甲州・武田家ゆかりの旧家「萩原邸」を移築した甲州田舎造りの古民家「田舎家」など。ホテルでは、これらの見どころや歴史を案内する館内ツアーも行っている。
南アルプスを望む東館、富士山を遠望する西館での滞在も決して引けを取らない。東館は大浴場に近く、リピーターに人気。西館は現代人のニーズに応えた洋室も備える。
◇ ◇
開湯1200年、「武田信玄の元湯」として親しまれている甲府湯村温泉。泉質はナトリウム・カルシウム―塩化物・硫酸塩泉。神経痛、筋肉痛、冷え性などに効くという。
男性用、女性用とも大きな大浴場と露天風呂を備える。男性大浴場は浴槽に黒い御影石、壁と天井に木材を使用し、重厚で味のある雰囲気をかもし出す。一方、女性用は男性用とは対照的な赤い御影石を使用。露天風呂は男女とも木の香り豊かなヒノキ風呂で、開放的な雰囲気の中で湯あみを楽しめる。
◇ ◇
料理は甲州の旬の素材をふんだんに盛り込んだ逸品ぞろい。上質な霜降りが特徴の銘柄和牛「甲州牛」、甲州ワインを飲ませた脂のうまみが強い「ワイントン(豚)」など、この地ならではの食材をこの道40年の調理長がコーディネートする。
▽山梨県甲府市湯村2の5の21。TEL055(254)3111。https://tokiwa-hotel.co.jp/
常盤ホテル外観
「日本庭園ランキング」上位にランクされたホテル庭園
離れ「松風」
松風から庭園を臨む
【公式サイト】甲府・湯村温泉 常磐ホテル|山梨 武田信玄の歴史とぶどうの里
※本特集記事は、観光経済新聞4月27日号(新天皇陛下の御即位前)に掲載したものです。