2013年9月にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC(国際オリンピック委員会)総会で、2020年夏季オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に正式決定された。それ以来、日本では「スポーツツーリズム」への関心がより一層高まっている。
「第二のオリンピック」と言われ、4年に一度開催のワールドゲームズ(WG)が今月20日からポーランドのヴロツワフで開催されている。今回は10回目のWGとなり、公開競技を含めた31競技(五輪に採用されていない競技種目)に111カ国、約4千人が参加している。
WGは国際ワールドゲームズ協会(IWGA)の主催であるが、IOCの後援を受けると共に、五輪と競技の入れ替えを行うなど強い結びつきがあるために「第二のオリンピック」と呼ばれている。
過去にWGの競技種目であった8競技(バドミントン、野球、ソフトボール、テコンドー、ビーチバレーボール、女子ウエイトリフティング、トライアスロン、7人制ラグビー)が五輪競技として採用された経緯がある。
WGは五輪と連携しているが異なる特色もある。相違点を列挙すると、(1)WGは五輪に採用されていない競技種目で実施(2)WGの出場選手は各国が選ぶのではなく、各競技のIF(国際スポーツ連盟)によって世界最高レベルという基準で選出される(3)巨額経費を要する五輪とは異なり、WGは既存施設を使用し、少ない経費での開催を目指している(4)行き過ぎた国威発揚や勝利偏重主義は抑えられている―などの特色がある。
第1回のWGは1981年に米国のサンタクララで開催され、2001年の第6回大会は秋田県で開催され、大成功を収めた。
秋田大会はアジアで最初のWGであり、WGの意義を認めて大会を開催した秋田県に敬意を表したい。今回のヴロツワフ大会には約100人の日本人選手が18競技(ボーリング、相撲、ライフセービングなど)に出場しており、健闘が期待されている。
日本ではともすれば五輪競技こそが「スポーツの華」とみなされがちであるが、スポーツの裾野はもっと広いので、人間にとってのスポーツの意義を考える上でWGの果たす役割は重要である。
WGの競技種目には、ダンススポーツ、オリエンテーリング、スポーツクライミング、サーフィン、フライングディスク、綱引き、ライフセービングなど多様なスポーツが含まれている。
観光旅行業界は、東京オリパラやラグビーワールドカップ(W杯)などのビッグスポーツイベントだけでなく、WG競技種目に着目して、より多くの人々が楽しめる「多様なスポーツツーリズム」の振興に貢献すべきであろう。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)