スイスのダボスで重要な国際会議を頻繁に主催している世界経済フォーラム(WEF)は、その一方でさまざまな経済レポートや国際競争力レポートを公表しており、世界的に高い評価を受けるシンクタンクでもある。2年ごとに発表される「旅行・観光競争力レポート」の最新版が公表された。
最新の「旅行・観光競争力レポート2017」は世界136カ国・地域が対象で、政策・法令、環境面の持続性、安全・保障、保健・衛生、旅行・観光の優先度、航空インフラ、陸上交通インフラ、観光インフラ、情報通信技術インフラ、価格競争力、人的資本、旅行・観光との親和性、自然資源、文化資源などのさまざまな指標に基づいて順位づけを行っている。
17年の総合ランキングをみると、ベスト20は第1位がスペインで、以下、フランス、ドイツ、日本、英国、米国、オーストラリア、イタリア、カナダ、スイス、香港、オーストリア、シンガポール、ポルトガル、中国、ニュージーランド、オランダ、ノルウェー、韓国、スウェーデン――の順となっている。
日本は09年の総合ランキングが25位、11年が22位、13年が14位、15年が9位と徐々にランクをアップし、17年についに4位に躍進した。アジアに限定すると堂々の第1位である。
評価指標別では、おもてなし、鉄道インフラ、陸上交通の便利さ、水道、衛生管理などが第1位の評価を受け、文化資源(無形文化遺産、世界遺産の数、文化観光)、殺人の少なさ、ICT(情報通信技術)関係などが高い評価を受けている。
一方で低い評価を受けている指標項目は、査証(ビザ)発給、消費価格の高さ、税金関係、従業員の雇用、外国人雇用、空港の混雑度、生物の絶滅危惧などである。
私は20年以上前に「2010年代のアジアで観光ビッグバンが生じる」と予測した。
まさに文明史的必然としてアジアで大きな観光革命が生じつつある。日本はアジア諸国の経済発展に伴う観光客の増大に焦点を当てて、見事にアジアでナンバーワンの観光先進国となったわけだ。
実にめでたいことではあるが、その一方で日本人による国内観光旅行が伸び悩むと共に、観光による地方創生が思い通りに進んでおらず、インバウンドばかりがもてはやされ過ぎという状況が続いている。
名実共にアジアでナンバーワンの観光先進国であり続けるためには、もっとバランスの取れた観光立国の推進に力を入れるべきではないか。