【私の視点 観光羅針盤 148】「北前船寄港地」連携への期待 石森秀三


 5月末に中国の大連市で「北前船寄港地フォーラム」が開催された。私は北海道のリーディングバンク・北洋銀行地域産業支援部アドバイザーを務めているために安田光春頭取(今年4月就任)に同行してフォーラムに参加した。
北洋銀行は取引先企業による海外ビジネスのサポートに注力しており、大連にも駐在員事務所を置いている。大連は人口が約700万人、「北の香港」「北海の真珠」とも呼ばれる魅力的な大都市で、日本統治時代の建物が多く遺されているが、その一方で新しい高層ビルが林立する発展途上の国際観光都市。

 街のあちらこちらに「美在大連(美は大連にあり)」というスローガンが掲げられており、街が花で飾られている。また2年ごとに夏季ダボス会議が大連で開催されており、MICE都市としても発展している。

 今年は日中国交正常化45周年・日中平和友好条約締結40周年であり、「中日観光大連ハイレベルフォーラム」との併催のかたちで「北前船寄港地フォーラムin大連」が開催された。日中観光交流は昨年両国で合わせて1千万人に達したといわれており、今後のさらなる観光交流の隆盛化が期待されている。

 特に、大連はアジア諸国に盛んに観光プロモーション使節団を派遣しており、国際観光の振興に力を入れている。
北前船寄港地フォーラムは、07年に山形県酒田市で第1回が開催され、その後に日本各地で開催されている。23回目の今回は初めて海外での開催になった。今回のフォーラムには二階俊博自民党幹事長をはじめ、約800人の日本人が参加し、約200人の中国人が参加したといわれている。北海道からは約50人が参加している。

 中国は習近平国家主席の提唱による「一帯一路」構想の実現に全力を投入しており、今回のフォーラムをきっかけにして、北東アジアで新しい交流圏・交易圏の誕生が期待されている。

 江戸時代以降、北前船の寄港地や船主集落として繁栄した日本海沿岸の11自治体は昨年4月に「荒波を越えた男たちの夢を紡いだ異空間:北前船寄港地・船主集落」として日本遺産に認定された。11自治体は、函館市、松前町、鯵ヶ沢町、深浦町、秋田市、酒田市、新潟市、長岡市、加賀市、南越前町、敦賀市。さらに今年5月に27自治体が追加認定を受けている。

 それらは、小樽市、石狩市、野辺地町、能代市、男鹿市、由利本荘市、にかほ市、佐渡市、上越市、富山市、高岡市、輪島市、小松市、坂井市、小浜市、宮津市、新温泉町、鳥取市、浜田市、呉市、尾道市、倉敷市、赤穂市、高砂市、洲本市、神戸市、大阪市。38自治体が北前船をテーマにして広域連携を図ることによって、新しい広域文化観光の展開が可能になるので、具体的な成果に大いに期待したい。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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