【私の視点 観光羅針盤 172】インドネシアへの期待 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三


 日本ではあまり報道されていないが、今年は「日本インドネシア国交樹立60周年」という記念すべき年である。インドネシアは1945年8月17日にオランダに対して独立宣言を行って独立戦争を闘い、49年12月27日に独立が承認された。日本は58年に当時スカルノ大統領に率いられたインドネシアと国交を樹立し、その後に巨額の政府開発援助を行って、極めて親密な関係を築いてきた。

 インドネシアは人口約2億6千万人で中国、インド、米国に次いで世界第4位の人口大国である。しかも1万3千を超える島々からなる広大な島しょ国家であり、資源大国でもある。

 また人口の約87%がイスラム教を信仰している世界最大のムスリム国家。一方で多民族国家として「多様性の中の統一」をスローガンにして、スカルノ大統領に続いて、スハルト、ハビビ、ワヒド、メガワティ、ユドヨノが大統領を務め、現在はジョコ・ウィドド大統領の下で経済発展途上にある。

 インドネシアは67年にタイ、シンガポール、フィリピン、マレーシアと連携して、ASEAN(東南アジア諸国連合、現在は10カ国が参加)を設立した。ASEAN本部はジャカルタにあり、インドネシアはASEANの盟主のような役割を果たしている。

 インドネシアからの訪日旅行者は、2010年に約8万人であったが、13年に約14万人、16年に約27万人、17年に約35万人と着実に増加している。インドネシアのLCC(格安航空会社)、ライオン・エアは今年12月にバンコク―成田便を開設し、来年1月にはバンコク―中部国際便、3月にはバンコク―関空便を相次いで開設予定。

 やがてジャカルタ―成田便なども開設されるはずであり、より数多くのインドネシア人が日本を訪れることになる。日本各地で空港民営化が推進されており、日本とインドネシア両国の観光交流の増大が期待されている。

 インドネシアで国民的人気を誇るアイドルグループJKT48は今年春に発売された楽曲「So Long」のミュージックビデオ撮影をオール北海道で行っており、JKT48のファンが北海道を訪れる可能性がある。インドネシアのテレビ局が北海道紹介番組などを制作しており、北海道人気が高まっているために、LCC就航便の増加が期待されている。

 インドネシアは世界最大のムスリム国家でもあるので、イスラム教の「ハラル」への対応が必要になる。ハラル認証を受けるためには原材料購入や加工過程における厳格化とともに、管理工程におけるムスリム人財の採用や従業員教育などが不可欠になる。

 また礼拝場所の確保もこれまで以上に必要になる。インドネシアは親日国でもあるので、今後の相互交流の高まりに大いに期待したい。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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