北海道内で「宿泊税」導入の動きが活発化している。法定外目的税としての「宿泊税」をすでに導入している全国の自治体は5月末現在で東京都、大阪府、京都市、金沢市である。道内ではスキーリゾートのあるニセコ地区の倶知安町が今年11月から道内で初めての宿泊税徴収を目指している。倶知安町の場合には、宿泊料金の2%を宿泊税として徴収する予定だ。
実は、北海道は2017年に観光税(宿泊税)の検討を始めたが、道内宿泊者数の約4割が道民であるために道民への増税だという批判が生じ、北海道議会での導入論議が停滞した。統一地方選が終わり、鈴木直道知事が新たに就任したことによって、観光税(宿泊税)課税検討が進展している。
今年5月に道は観光税(宿泊税)の課税対象範囲について、(1)1泊5千円以上(2)同7千円以上(3)同1万円以上―の3パターンを軸に検討する方針を公表した。税収は年間5億~30億円と試算されている。
有力視されている1泊7千円以上の場合には、一律1泊100円の課税で税収が年間約15億円と見込まれている。さらに段階的課税で7千円以上100円、1万円以上200円、1万5千円以上300円の場合には税収が年間約25億円と見込まれている。
ところが道内のホテル・旅館客室の約3割を占める札幌市の秋元克広市長は、6月初旬に宿泊税導入を本格的に検討する考えを明らかにした。その背景には、ともに宿泊税課税を主張し対立してきた福岡市と福岡県が5月末に課税額を調整した全国初の「二重課税」方式で合意が成立したことが影響している。
福岡市と福岡県の場合には、宿泊料1泊2万円未満で宿泊税200円(市150円、県50円)、宿泊料1泊2万円以上で宿泊税500円(市450円、県50円)という仕組み(徴税事務は市が担当)である。札幌市は今後、福岡市と福岡県の二重課税方式を参考にして北海道との協議を行いたい考えである。
ただし、札幌市内の宿泊客のうち道内客は38%であり、丁寧な議論が必要になる。道内では、函館市、富良野市、ニセコ町などでも宿泊税導入が本格的に検討されており、地域ごとに不公平の生じない仕組みの導入が求められている。
宿泊税導入論議の活発化の背景には、来道観光客の増加を新たな財源の確保につなげ、観光振興への投資の意図がある。札幌市の観光関連予算はこの4年で1.5倍の20億円超まで増えたが、これ以上の増額は難しいという判断が働いている。
札幌は道内観光の拠点であるが、案内板の多言語化やWi―Fiの整備、MICE施設の運営、2次交通の充実化、キャッシュレス決済のインフラ整備、観光・MICE人財の育成など、国際観光MICE都市としてのレベルアップを図るために特定財源を必要としている。
道内における今後の宿泊税導入の動きに注目していきたい。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)