旅のスタイルがモノ消費から体験・コト消費にシフトしているといわれて久しい。コト消費への対応を加速させようと各地で体験商品の造成が展開され、サービスに体験的な要素を入れることでより付加価値をつくり、単価を上げていくような取り組みが盛んになってきている。
さて、モノ消費からコト消費に至った経緯を簡単に振り返ってみたい。誰でもいつでも気軽に旅に行けるようになってきたことで旅は日常化され、単純な物見遊山ではあきたらなくなってきたことや、流通網の多様化・モノ余りの時代でどこでも入手できるようなものをわざわざ、旅先で買う必要もなくなってきたこと等があげられるだろう。
また、世界的にみると、所得水準の向上やグローバリゼーションによる都市の均一化といったこともコト消費へのシフトを後押ししている要因と考えられるだろう。
そんな中、コト消費の次の時代は、「イミ・イギ消費」といわれている。2015年に国連がSDGsというキーワードを出して以来、各所で持続可能性が問われるようになってきた中で、より消費活動の在り方が変わってきている。
消費者がより環境に配慮であり、動物愛護であり、文化財の保全であり、次世代の育成であり、持続可能性に自分自身の活動がつながっているかという要素の有無が一つの判断基準になってきている。
その商品そのものだけでなく、その奥にある背景としてのイミやイギを大事にしていくという流れが加速しているということだ。これは、国内の需要より欧米を中心とした海外からの流れの方が大きい。見方を変えると、最近ではこの要素に対応できていない商品は選択肢にすら入らない、あるいは敬遠されるという流れすら出来上がっている。
最近、体験の在り方もガラパゴスの国内向け展開だけでなく、世界水準と比べた際の違いを明確にしてクオリティのアップに努める流れが加速しているが、その時、このイミ・イギ消費という観点もしっかりと加味して対応していくことが求められてくるだろう。
日本国内においてはまだ対応しきれていないところも多いが、このイミ・イギ消費で活動をしている人たちは感度が高く、情報発信力も高い人たちである。早いタイミングでこの水準を達成し、それを満たしている地域・施設としてのポジションを確立することができれば、選ばれる・わざわざ行く価値がある場所としてブランディングがなされていくことは間違いないだろう。
この観点で見ると先手必勝である。時代の流れを少し先の視点でしっかりと読みとり、対応を加速させることで、より理解ある消費者から愛される観光地となり、持続性が担保された形で、高付加価値型で回していくことができれば、地域に明るい未来がやってくることは間違いない。
イミ・イギという観点での再編集が、きっと生き残りへの一つの方策となるだろう。
(地域ブランディング研究所代表取締役)