訪日観光客のリピーター化や欧米比率が高まる中、地方への比率が高まってきている。観光白書によると、2012年に45.8%だった三大都市圏以外の地方への訪日客訪問率が18年には57.7%まで伸びている。消費金額でみても、地方消費が15年で全体の23.6%だったものが、18年で28.5%まで伸び、1兆362億円が消費されており、伸びが顕著である。
この背景は、アジア圏はリピーター中心となり、ありきたりの都市観光に飽き始めており、欧米豪は滞在期間も長い中で、地方部にも滞在する時間が長いことが挙げられる。
昨今、訪日客からの要望で増えているキーワードが「Off the beaten track(path)」という言葉だ。まだ人の訪れていない、よく知られていない、ひと気のない場所へ行きたいという意味だ。
人気の観光地だと、オーバーツーリズムも問題になり始め、どこに行っても観光客だらけで、せっかく異国情緒を感じに来ても味わえないのはつまらない、むしろ幻滅してしまうことも要因だ。
皆さんも海外に行った時に、あまりに日本人に会うと少しがっかりした経験があるのではないだろうか。これは外国人も然りであるということだ。併せて、旅自体が一般化されているからこそ、有名な観光地だけでなく、自分だけが自分しか知らない特別な場所で、特別な経験をしたというのが多くの観光客の自慢にもなってきている。
訪日客からすると、日本人の日本人らしい生活そのもの、作られたものではなく、ありのままに触れたいという需要が高まってきている。
この言葉が生まれてきている背景で考えると、世界的なトレンドとして考えていっていいだろう。世界中で旅が容易になってきたからこそ、多くの人が旅慣れてメジャーなものではなく、もっともっと知られていない奥地へ行ってみたいという感覚を持ち、自分だけのホンモノの世界に触れたい、まだあまり人が訪れていない未開の地を開拓したい、そんな刺激を求め始めているのだ。
とかく、インバウンドの企画を考える時に抜けがちな視点ある。世界的な需要・文脈がどんなトレンドで動いているのかマクロで捉えていくことだ。世界の観光客がどんな需要で旅をしていて、日本に何を求めているかということを客観的に考えることができていない。今生まれている需要は、世界で起こっていることが日本にも到来しているにすぎないケースが多分にある。
日本だけが特別だという視点で見るのではなく、世界ではやっているトレンドがあるなら、日本にもきっと新たな需要が生まれると考えていくと、次の可能性に気づけるに違いない。そのためにも常に世界のトレンドにアンテナを広げ、自らが観光客として各地を旅してみることでそこを感じていけるだろう。
と同時に、日本各地に外国人が増えている現場をもっともっと見てほしい。そうすれば、新たなヒントがいっぱい詰まっている。視点を変えて、この新需要に応えていく地域が増えていってほしい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)