最近、訪日観光客はほぼ受け入れができていないはずなのに、なぜまち中には一定数の外国人がいるのかという声を聞くことがある。厳しい入国制限をクリアして入国している人はまだわずかであり、国境を越えた移動制限が厳しくなり、そのまま日本に在留している人も確かに一定数いるが、大多数は在留外国人である。
法務省のデータによると、在留外国人数は293万3137人(2019年末)となっている。中国81.4万人、韓国44.6万人、ベトナム41.2万人、フィリピン28.3万人、ブラジル21.2万人と続き、欧米系でみるとトップでアメリカが5.9万人であり、合計195の国・地域から来訪し日本に在留している。在留資格は永住者79.3万人、技能実習41.0万人、留学34.6万人、特別永住者31.2万人、技術・人文知識・国際業務27.2万人となっている。都道府県別でみると、東京59.3万人、愛知28.1万人、大阪25.6万人、神奈川23.5万人、埼玉19.6万人と、大都市近隣を中心に多い状況が理解してもらえるだろう。
昨今、インバウンドの回復にはもう少し時間がかかるので、国内中心で需要喚起策を考えようという声も多く聞こえる。マイクロツーリズムをはじめとした国内需要の喚起から経済を回していくことに私も大賛成だ。その際に、一緒に考えてほしいのが、この在留外国人である。
日本の文化と母国文化との違いを理解し、数ある国から居住先として日本を選んでくれて、住んでいる人たちである。見た目だけで、感染拡大国から来たのではないかといった偏見を持つのではなく、同じ日本に住んでいる人たちだと理解して受け入れてほしい。
そして、何よりこの在留外国人こそ、このwithコロナ期において大事にしてほしいターゲットにもなりうる。多くの人が母国語だけでなく日本語も一定数理解してくれているので、過度な言語対応の準備をしなくても受け入れの余地がある。
また、日本と母国の文化のギャップを知っているがゆえに、日本の地域資源のどんなところが母国の人にとって魅力的で面白いか、独自の目線でチェックしてくれる。そして、母国に情報発信してくれる可能性もある。東日本大震災の際も、在留外国人が正しい情報を発信してくれて、日本全体の安心安全の理解が迅速に進んだこともあった。
そう考えると、近い将来の回復を見据えて、一つの集客・広報のルートとしてこれらの方々を歓迎して、魅力を発信していくことも方法として検討していけるだろう。日本好きの方は、日本好きのコミュニティに在籍しており、その1人からの流れが国内外の日本ファンにどんどん拡散されていくことが期待できる。
安心安全に配慮した国内需要を喚起していく流れの中にこの考え方を少し入れて、回復期には国内、海外両方から愛されるプログラムのブラッシュアップをすることができれば、より地域の魅力が高まり、持続性が強化されていくに違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)