「Go Toトラベル」がスタートして1カ月経過したが、好調な滑り出しとは言い難い状況が続いている。各県判断で移動自粛を呼び掛けていることや、見えない不安から消費者マインドが追い付いていないことも課題だろう。
本紙の読者なら、何かの機会で感染症対策の基準を満たし、Go Toトラベルの割引対象となっている宿泊施設に、この1カ月のうちに滞在された方も多いと察する。
実際に滞在してみると、ここまで感染症対策が万全なのかと驚いている方も多いに違いない。スタッフの感染対策はもちろんのこと、来訪者への検温、手指消毒、館内のマスク着用といったことや、バイキングの極力縮小、運転代行中止等の徹底ぶりには目を見張るものがある。短期間で、よくぞここまでオペレーションを作り替えたなと関心するほどである。
感染症対策の専門家が策定したガイドラインに基づき、業界をあげて取り組んできたがゆえに、ここまでのものを短期間で構築できたことは関係者の皆さんの努力に敬意を表したい。
徐々にコロナウイルスの実態が見えてきている中で、感染症対策がきちんととられた宿泊施設において、お互いにルールを守って滞在していれば、基本的にそこから感染拡大していくリスクはほぼないに等しいと考えられている。
昨今では、日常的に感染リスクを避ける動きをして消毒等を徹底し、夜のまちや家庭内の密な空間で、近接して大声で長時間話したりしなければ、大きな問題はなさそうであるということが専門家の共通認識になっている。この点を含めて消費者の理解が進んでいけるといいに違いない。
宿泊施設は、コロナの実態をしっかりと理解した上で、どの業界よりも先んじて感染症対策が徹底されていると認知され、むしろ消費者への理解・啓蒙(けいもう)の場になっていく潜在性があるともいえるだろう。
その時、もう一つ大事なポイントがこの感染症対策の維持である。飲食店等の場合、せっかく感染症対策をしているシートが掲出されていても、スタッフの徹底がされておらず、不安な思いをした方もいるのではないだろうか。
感染症対策は、導入して業務を再開するフェーズから、それが当たり前に徹底されて、その徹底ぶりから選ばれるフェーズになってきているといえる。
せっかく宿泊施設でいい流れができているので、それが認知され、観光業界全体の安心水準として定着してくれることを願っている。
先日の日本政策投資銀行のアジア・欧米豪12地域の訪日外国人旅行者意向調査でも安心・安全、衛生面が評価され、アジア圏から1位、欧米豪からも2位に選ばれており、日本への興味関心や需要は高い。ウィズコロナ期にしっかりと体制を整えて、今まで以上に衛生面が担保されている状態で、インバウンドの回復も迎え入れていきたいところだ。
宿泊施設はすでに日本の感染症対策のモデルケースになっている。しっかりと対策できていることへの社会的認知の拡大をまずは期待したい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)