【私の視点 観光羅針盤 305】団体向け体験から滞在&交流へ 吉田博詞


 地域への誘客拡大に向けて着地型企画を検討する際、体験メニュー充実策が議論に挙がる。この着地型企画においては、パッケージ化された安易に何かを切り出した参加型であればよいという体験ではなく、学び、体感、触れ合いといった要素が組み込まれた、滞在・交流のコーディネート型が期待されていると考えている。

 これまでは、モノからコトへとのキーワードで、教育旅行等の団体旅行受け入れのために旅行会社からのオーダーに応える体験が求められていた。パッケージ企画の中に織り込んでもらえるべく、団体客に一定時間でコストも抑えて提供できるものが重宝されていた。何かしらで手を動かして、参加型の体験を作れば一定数の誘客は可能であった。今後も団体客だけを受け入れていく前提であれば、この発想の体験開発でも問題ないだろう。

 ただ、コロナの影響で個人観光客化の流れが加速している中、安易な体験開発では生き残る企画になることは難しくなってきている。個人・プライベート客の旅に対するニーズも多様化している中で、そこに適用した企画立案が求められる。

 特に、外出制限下や密を避けたニューノーマルの中で、特別な人とだけで特別な時間を過ごしたいという需要拡大への対応は必要となる。旅のスタイルも感染リスク軽減から、複数のものをぎっしり詰め込むより、人が少ない場所で自分たちだけのゆったりした特別な時間を満喫したいという需要にシフトしつつある。着地型企画もこれまでのパッケージ化されたものではなく、ターゲットの特別な滞在時間演出のお手伝いをするという発想で組み立てが求められてきている。

 提供する側も、参加者の目的や期待することをくみ取りながら、期待を上回る滞在のコーディネートをするという発想が必要だ。予約受付時やプログラム開始前の自己紹介等で目的を聞いてみて、何かの演出に加えるだけでも満足度は変わる。

 学びたい、触れあいたい、写真を撮りたい、プレゼントしたい、思い出を作りたい等、何を求めているかをしっかりと想像した上で、押しつけではない時間の演出を考えて構成していくことが必要である。

 こうした地域での特別な滞在時間が増えていけば、来訪者にとってあなたの地域が特別な思い出の場所に変わっていくことは間違いない。また、自社のものだけでなく地域の他の魅力も伝える、季節の特別な違いといったものもオモイを込めてコンシェルジュ的に案内をすれば、より深い関係が構築され、再訪意欲拡大につながっていくことも多分に期待される。

 一定レベルを超えた宿泊施設においては、コンシェルジュ的な滞在価値の提供や関係構築といったサポートが定着してきているが、着地型企画においてもこの流れが加速することで、より単価アップ、リピートアップが期待できるだろう。各地における発想の転換を期待していきたい。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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