【私の視点 観光羅針盤 363】2023年は3年間の努力が花開く 吉田博詞


 2023年が始まった。コロナの影響が間もなく3年になる中、多くの方々が耐え忍んだ先に、全国旅行支援や水際緩和によるインバウンド復活等、観光業界にとっても回復の実感値が徐々に高まってきたのが2022年だっただろう。昨年を振り返ると、高付加価値、サステナブル、地域一体といったキーワードが加速した年だったと考えている。

 まず高付加価値という観点では、宿泊施設や滞在プログラムにおいても、地域らしい文化が織り込まれたモデルが出来上がり、国内外の人が地域に滞在してローカルな文化や人と交流し、その持続的な経済活動に積極参画するという流れが各地で広がっていったことは非常に意義があったように思う。ウクライナ危機・原油高等による値上げが相次いでいるが、観光業界においては価値の再定義から、ダイナミックな価値ある商品が生まれていることは業界の刷新という点でも意義ある流れだと考えている。

 次にサステナブルという観点では、この概念自体が各地へ浸透した年だったと感じている。そもそもSDGsとサステナブルツーリズムの違いに関して、地域の未来のために、文化や社会、経済、環境がどうあるべきかというポイントで議論が進んでいることは非常に望ましい流れだと感じている。地域の先行きに危機感を覚えた方々が議論を重ねていることは、今後においてもより定着していくことが期待される。
最後に、地域一体という観点では、各種事業において地域が連携して取り組むことが求められてきた中で、そうした座組が定着してきたことも非常によい流れだと感じている。各地で宿、アクティビティ、交通、ガイド等の各種事業者が一緒に議論をして、お互いの相互補完の中で地域経営を形にしていこうと動いていることは非常に意義あることだ。

 では、2023年はどんな年になるだろうか? 最新の国際航空運送協会(IATA)発表によると、2023年の世界航空需要はコロナ前の86%まで復活すると予測されている。世界的な大きな移動需要復活に伴う観光業界活性化には期待をしていきたいところだ。

 地域の変化としては、これまでの3年間の通信簿が出る年だと考えている。この3年で消費者は一定数成熟して、地域に期待することの目線も高まったといえるだろう。私自身、先を見据えて試行錯誤して改善を重ねてきた地域の方々と多く親交させてもらったが、その方々に伝えたい、「2023年こそ花開きますよ!」と。耐えて、耐えて、丁寧に地域づくりに汗をかいてきた皆さんが、新たなマーケットの恩恵を受けるサイクルが確実視されているのが、2023年だと考えている。

 地域の誇りある文化、景観、風土を次世代に継承するという明るい未来のために、地域の合意形成と高付加価値化を進めてきた各地の皆さんが、笑顔で今年の年末が迎えられることを心から願っている。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 

 
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