【私の視点 観光羅針盤 367】オンリーワンの見つけ方 吉田博詞


 地域のブランディングをお手伝いする際に、そもそも魅力的な資源がない、うちはオンリーワンがないといった観点での悩み相談を受けることが多い。何か分かりやすく世界で一番、日本で一番という要素があればすぐに整理をつけやすいだろう。

 しかし、それがないケースでは、どこにでもある、すでに隣のまちでやっているから二番煎じはやりたくないといったコメントをもらうことも多い。
 この時に陥りがちな課題が、一つの資源の単純な指標だけで評価しようとしている点だろう。生産量、出荷高、作付面積、消費量等でのナンバーワンや、世界遺産や日本三景等のお墨付き、発祥の地や歴史舞台等、他にはない要素であれば容易にご当地の自慢として打ち出しやすいポイントになるだろう。これらを訴求ポイントとして展開する手法はこれまでもなされており、単純な冠だけでは人はなかなか来てくれなくなっているので、上記を保有する地域でも資源の磨き上げに力を入れている状況である。

 ただ、多くの地域はそんなナンバーワンの要素はないので、どうしたらよいかという壁にぶつかることが多い。全国4位くらいの位置づけでうたうにも積極的に出しづらいといったことや、うちのまちにはどこにでもあるものしかないといった相談はよく出てくるものである。

 その時、考えてほしいのが掛け算の発想である。その地域で、他と比べて可能性がある資源に対して、食べ方や調理の仕方、素材に何かを加え、他の何かと組み合わせてみると、○○なのに○○をするのはうちのまちだけといった差別化要素が明確になってくる。資源単独で勝負するのではなく、ご当地の資源に対して客観的に独自の手法・背景といったものを掘り下げてヒアリングしてみると、いろいろと面白い差別化要素が見つかることが多い。そんな違いを明確に整理して、加味すれば十分に魅力的な資源に進化させることができる。

 それでもまだパンチが弱いと感じる場合は、もう一つ掛け算を加えてほしい。それは人の魅力だ。オモイをもったAさんが提供する○○な○○と、三つの要素を掛け算した瞬間に、一気に差別化要素が際立っていく。

 何か新たなものを加味するのではなく、皆さんのまち独自でやってきた要素がすでにあるはずなので、できる限りそこをひも解き、その価値をうまく表現して伝えていければ、より響く展開にもっていける可能性は十分にあるだろう。

 基本は、すでにある資源をうまく因数分解して、その中で各地オリジナルな差別化要素を見つけ出し、しっかりとストーリーをもってエッジを立たせていければ共感してくれる人はもっと増えてくるに違いない。そんな独自要素が際立った地域が増えていくことを願いたい。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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