コロナ禍でウェルネス等のキーワードが注目された中、長寿や健康に対する世界的な関心が高まっている。この流れの中で「ブルーゾーン」という言葉が話題になっている。ナショナル・ジオグラフィック誌とダン・ビュイトナー氏が世界の長寿研究者たちと共に長寿の秘訣を徹底的に研究してまとめた本が『ブルーゾーン』という書籍で、2022年11月には日本語訳版も出版されている。世界の百歳人(センテナリアン)が多いとされる五つのエリアから、ノウハウを学びまとめている。
五つのエリアとは、ブルーゾーンという言葉を初めて使ったイタリアの医師ジャンニ・ペス氏が最初に見つけたイタリア・サルデーニャ島、ダン・ビュイトナー氏が研究・評価したアメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコジャ半島、ギリシャのイカリア島、そして日本の沖縄である。これらの場所は研究者や医師らの協力により長寿地域の国際的な呼称としてブルーゾーンという言葉が定着してきている。
著書では、世界の五つのエリアの共通項として、長寿の秘訣を九つのポイントにまとめている。何を食べ、どのように一日を過ごし、人と付き合い、ストレスを発散させ、どんな世界観を持っているのか? (1)適度な運動を続ける(2)腹八分で摂取カロリーを抑える(3)植物性食品を食べる(4)適度に赤ワインを飲む(5)はっきりした目的意識を持つ(6)人生をスローダウンする(7)信仰心を持つ(8)家族を最優先にする(9)人とつながる―の要素に集約されると整理されている。世界の主要なエリアに、共通する健康的に長生きするためのポイントである。
これらのポイントに対して、沖縄におけるより大きな特徴としては「生きがいを持つ」「植物性食品を主体にした食生活を維持する」「農作業をする」「大豆をたくさん食べる」「近所付き合いを続ける」「日光を浴びる」「よく体を動かす」「薬用にもなる菜園を作る」「強い意志を持つ」といったことがまとめられている。
ブルーゾーンの影響もあって、より豊かな人生を送るための知恵や工夫を沖縄で学びたいという人々の来訪需要が増加している。知的探求を求める層の消費金額は大きいことを考えると、可能性を模索したいものの、長寿の方々には日常の生活があり、見世物ではないといった課題もある。
そんな中、1993年に「長寿日本一の村」宣言をした大宜味村では、受け入れルールの策定や受け入れ態勢の構築に取り組んでいる。長寿の方々や地域の文化に配慮し、ルールを守れない人は受け入れることはできないといった方針で仕組み化を進めている。長寿の方々や文化が尊重され、理解ある来訪者との交流が長寿の方々の生きがいにもつながり、よりよい経済的循環モデルが構築されることで、地域の明るい未来が切り拓かれていくに違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)