中国の春節は4千年以上の歴史を誇る重要な年中行事である。今年の春節は2月4日から10日までの7連休になる。故郷で春節を祝う中国人による帰省ラッシュによって延べ30億人ほどが大移動するという。
一方で、春節には都市部の若者を中心にして外国旅行ブームが生じる。昨年の春節の際には約650万人が外国に出掛けたといわれているが、中国のオンライン旅行大手のシートリップ(携程旅行網)社によると今年は700万人が外国旅行を行うと予想されている。
中国人の外国旅行の目的地ベスト10は、タイ、日本、香港、シンガポール、ベトナム、インドネシア、モーリシャス、米国、オーストラリア、フランスの順。
昨年2月の訪日外国人250万人のうち、中国から71万人、台湾から40万人、香港から18万人であった。今年の春節の中国国内での外国旅行予約は前年同期比約32%増なので、より多くの中国人の訪日が期待されている。
春節に日本を訪れる中国人は温泉ツアーやスキーツアーを好んでおり、北海道、富士山、東京、京都、大阪などが人気の訪問先。札幌の雪まつりは春節と同時期に開催されるので多数の中国人が好んで訪れるスポットだ。
中国人旅行のアナリストは近年の中国人外国旅行の動向について、「新世代」「二線・三線都市」「教育旅行」をキーワードにした変化を指摘している。新世代は、中国の豊かさしか知らない1990年代~2000年代生まれの都市居住の若者のことで、新世代の外国旅行者のうち58%が女性であること。
二線・三線都市は、貴陽、常州、南昌、昆明、太原などの内陸都市で、今後これらの地方都市から団体での外国旅行が増えること。教育旅行は、1980年代生まれが親となる時代を迎え、受験勉強に偏重した公教育だけでなく、もっと自由な学びを子どもに体験させたいことから教育旅行が好まれると予想している。
日本への中国人旅行者の激増に伴って数多くの課題が鮮明になっている。例えば、中国語での対応や表記が求められており、すでに多言語音声翻訳アプリの活用などが進められている。
同様に、中国人の消費に伴う決済方法への対応も重要になっている。中国ではキャッシュレス決済が当たり前であり、アリペイ(支付宝)とウィーチャットペイ(微信支付)が2大決済アプリである。ところが日本では依然として現金決済が主流のために各店舗で決済端末の導入が進展しておらず、消費意欲の高い中国人観光客にストレスを与える結果になっている。
訪日中国人の動向として、モノ消費からコト消費への変化が指摘されているが、キャッシュレス決済への対応は不可欠の課題である。中国人旅行者の激増は日本の決済システムの変革を強く促すことになるだろう。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)