2018年度税制改正で、中小企業の事業承継をスムーズにする大幅な改正がなされそうだ。後継者不足に悩む中小企業の事業承継に一役買いそうである。
そもそも、中小企業の事業承継はなぜ進まないのであろうか。まず、その会社の株式をうまく次世代に移せないというのがその主な理由であろう。現行の相続税法上、中小企業の株式(いわゆる未上場株式)はまったく換金価値がないにもかかわらず、一定の評価のもと、亡くなった者の財産と認識され多額の相続税が課される場合がある。上場会社の株式は証券会社等を通じていつでも換金できるが、中小企業の株式は、そういったことはなく、おおむね換金価値はないといっていい。この多額にかかる相続税が元で、会社を廃業せざるを得なくなる。
数年前に事業承継税制ができ、現行の相続税法とは別に、中小企業の株式を後継者に承継しやすい状況ができた。しかし、当初はその適用要件が厳しく制度を利用する者があまりいないという状況が続いた。近年、もう一段の改正がされたが、承継した株式に対する相続税が実質、53%程度しか猶予されないというもので、承継に二の足を踏む者も少なくなかった。日本以外の諸外国では、75%から100%その納税が猶予される国もあるのにだ。
そこで、今回、このような状況を受けて、納税を猶予される割合を大幅に改正する予定だ。少なくとも、80%以上猶予されるとの情報もある。やっと諸外国なみになってきたようだ。もちろん、一定のルールのもとにこの税制改正を行わないと、実質的に会社を使って、本来収めるべき税額を収めないというような、租税回避行為に使われる懸念もある。今回の改正を踏まえ、まだまだ、すばらしい技術や才能、サービスを提供できる、日本の中小企業の事業承継が進むことを願いたいものである。
(髙村税理士事務所代表、髙村健一)