久し振りに札幌を訪れた。この時期北海道での一番の楽しみは、なんたってアスパラガス! 趣向を凝らしたお料理が堪能できるのは、旬の今ならでは。
まずは北の巨匠、中道博シェフ率いるラパンフーヅ・グループの一つ、「ランファン・キ・レーヴ」へ。児玉雄次シェフの独創的な料理が楽しめる同店、いつもワクワク感で一杯だ。
白い泡に、紫色の花びらが載った一皿がサーブされた。何だろう?と思っていると、そこにゆでたてのアスパラバスが登場し、それぞれのお皿に取り分けられる。泡の下には、卵黄のピクルスが。これを崩してアスパラに付けていただくのだが、ほどよい酸味がアスパラのうま味を引き立てる。ゆで加減のちょうど良い、旬のアスパラのおいしさは格別! 聞けば、ゆで時間は1分30秒だと言う。
翌日ランチに伺ったのは、札幌市内の南仏料理店「プロヴァンサル・キムラ」。南仏各地で修業を積まれてきた木村浩シェフの「確実な美味」を求めてたびたび訪れる。登場したのは、ホワイトアスパラガスのムース。添えられたトマトのジュレの酸味が、ホワイトアスパラの濃いうま味と調和して、ため息が出る絶品。
そしてその夜は、札幌グランドホテルで硲(はざま)啓員(ひろかず)総支配人とのディナー。小泉哲也総料理長がご準備下さった他のお料理は次号に譲るとして、アスパラガスについてのみ述べるなら、まずは総料理長とご縁の深い酪農大学から取り寄せた、紫アスパラガスのフライ。これだけ太いアスパラはお目に掛かれないという立派なモノに、薄切り肉を巻いてフライにしてあるのだが、むっちゃジューシーで強烈にウマイ。
そしてさまざまなお野菜と、帆立(ほたて)のグリル、卵黄のみそ漬けと共に供されたホワイトアスパラガス。こちらも、いいあんばいにねっとりした卵黄とのコラボレーションが最高で、ホワイトアスパラの味がストレートに押し寄せて来た。
最終日は、札幌で最も高名な三ツ星レストラン、中道博シェフの「モリエール」。お皿にはエディブル・フラワーとハーブ、そこにゆでたてアスパラが投入される。花弁の下に隠れていたのは、おろしたグラナ・パダーノ。パルミジャーノ・レッジャーノよりマイルドな粉状のこのチーズを、別添の卵の殻に入った卵黄ソースと混ぜれば、ちょうど良い塩味でゆでたてのアスパラにバッチリ!
お次はホワイトアスパラのロースト。タコ糸で4本ずつ束にしたアスパラを、豚の背脂の生ハム「ラルド」と共に鍋でローストした一品。ラルドの塩味、焦げた部分の香ばしさが、ゆでたアスパラとはまた違った味わいを醸し出し、これまた口福な味わい。
ルイ14世が好物だったとされるホワイトアスパラ、かつては輸入品が主だったが、やっぱり道産の方が美味だと感じるのは筆者だけではないだろう。
図らずも、アスパラガス食べ比べの様相を呈した今回の旅。なんとも贅沢(ぜいたく)だった。アスパラガス万歳!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。