先日、河口湖畔の「富士レークホテル」で開催された、「フランス料理プルミエ御披露目会」に出席させていただいた。名門ホテル「プラザ・アテネ・パリ」などで経験を積み、来日後は「マキシム・ド・パリ」、ホテル椿山荘「カメリア」で総料理長を歴任した、フレンチの巨匠ダニエル・パケ氏を招聘(しょうへい)、昨年よりフランス料理の提供をスタートさせていた同館。レストランをリニューアルオープンし、そのお披露目だった。
天気が良ければ富士山が奇麗に見えるスカイホールで、お昼に催された立食のカクテル・ブッフェには、200名以上の参加者が詰めかけた。冒頭のあいさつで井出(いで)泰済(やすなり)社長は、自分は石橋をたたいても渡らない男だが、国際化を図るためには必要だと、パケ氏を迎えることにしたと経緯を説明、熱い胸の内を語った。
その後パケ氏の紹介ビデオが上映され、得意とするのは伝統的なフレンチで、フォンはもちろんのこと、全て一から手作りしていることなどが披露された。
パテ・ド・カンパーニュや甲斐サーモンの薫製、鴨(かも)肉コンフィのサラダなど、いずれもひと手間掛かった料理が並ぶ。フォアグラソースが添えられた鴨肉のローストや、美しいサシが入ったローストビーフなど、豪華な食材もふんだんに使われていた。
圧巻は、何メートルあるんだろう?という超長いナポレオン・パイ。ギネス・ブックに載るんじゃないかというほどの巨大さで、運び込まれた時はフラッシュの嵐であった。閉店した銀座の名店「マキシム・ド・パリ」の名物だったこのミルフィーユをいただけるのは、同店の総料理長を務めたパケ氏のおかげだ。
手の込んだデザートもスゴイが、パケ氏のこだわりでベーカリーをオープンさせたことも、特筆に値する。バゲットやパン・ド・カンパーニュなど、焼きたてのパンも並んでいた。これが朝食でもいただけるのだから、口福である。
ブッフェでゲストを満足させるのは、並大抵のことではない。実は筆者もいくつかのホテル内レストランでブッフェ・メニューのコーディネートをさせていただいたことがあったのでよく分かるが、これほど素晴らしいブッフェを提供するには、どれだけご苦労されたか想像に難くない。
夕食は、モチロン同館フランス料理レストラン「プルミエ」にて。アミューズとして供された蛤(はまぐり)のグラタンは、小さいながらも本格フレンチの技が凝縮された一品。前菜のカニのアスピックも、伝統的なフランス料理の冷菜である。甲州和牛のコンソメスープも、アイナメのロティのソースも、丁寧に出汁(だし)を取っていることが分かる味。メインの仔羊のロティ、デザートのサバランに至るまで、正統派のフレンチを堪能させていただいた。
バリアフリーに注力されていた井出社長、次は国際化を見据えるという、経営感覚の鋭さには脱帽だ。でも、この日の主役はパケシェフと山下雪実スーシェフ。お疲れさまでした!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。