海外出張に行ってきた。行先が中国大連と近いこともあり、マイレージの無料航空券でエコノミーの予定だった。だが病み上がりだったのでチトぜいたくをして、これまたマイレージ払いで当日ビジネスクラスにアップグレードした。
がぜん旅が楽しくなる。呑兵衛(のんべえ)の筆者にとっては、シャンパーニュがいただけるのがうれしい。そして座席のゆったり感もモチロンだが、何といってもやっぱり機内食が豪華になる。
今夏行われたインターネットのアンケート調査によると、男女約2千名のうち、海外渡航の際の機内食を楽しみにしている人は、約75%(とても楽しみ33.2%、やや楽しみ41.6%)という結果となったそうだ。ハズレもあるが、つい期待してしまうのは、筆者だけではないようだ。
マイレージの関係で筆者はJAL派なのだが、機内食のレベル向上に力を入れておられるのがよく分かる。例えば現在エコノミーとプレミアムエコノミークラスでは、日本最大級の若手料理人コンペティション「RED U―35」の上位入賞者や、ミシュラン二つ星「L,Effervescence」の生江(なまえ)史伸(しのぶ)シェフ、超人気店「賛否両論」の笠原将弘シェフ監修のメニューなどそうそうたるラインアップ。
ビジネスクラスのコンセプトは、「BEDD」。フルフラットシートの導入で快適な睡眠がとれる環境が整い、睡眠のBEDにもう一つのD、Dine(食べる)、Delicious(おいしい)、Dream(夢見ごこち)の意味を加えたもので、目指すは空の上のオーベルジュ。
さて、今回は近距離路線だったので「BEDD」ではなかったが、思いの外、充実の内容だった。往路の和食はメインが「鮭(しゃけ)北海焼き」「豚山椒(さんしょう)餡(あん)掛け」、洋食は「国産牛のハンバーグステーキ大根おろしソース」で、筆者は洋食を選択。近距離でサービス時間が短いから仕方ないものの、ビーフリエットや海老(えび)のマリネなど前菜と同時にハンバーグが提供されるため、どうしても熱々のうちに食べたくて、フライングで先にハンバーグをいただいた。ナイフを入れるとジュワッと肉汁がしたたる本格派。国産牛とうたっているだけあって、ガッツリとした肉感が。大根おろしソースはやや味が濃いものの、別添なので調整すればOK、満足度は高かった。
中・長距離便だと、炊きたてのご飯がいただける。高度1万メートル以上でご飯を炊くのは至難の業だ。気圧が低いと水の沸点も低くなるから、米が生煮えになってしまう。そこで同社では、シリコン製専用鍋を使用し、プログラミングされた電子レンジで炊き上げているのだという。
公式サイトの年譜にも、2005年に炊きたてご飯の提供を始めた旨が明記されている。それほどスゴイことなのだと思う。芯が残らないようやや軟らかめではあるが、機内で炊飯して炊きたてを提供しようという心意気は素晴らしい。
旅という非日常の世界を盛り上げてくれる機内食。さらなる発展を願う!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。