ガラス越しにピザの調理が見えるオープンキッチン「ピザシアター」は、子どもからも好評だ。持ち帰り客獲得を目指し、入りやすい店舗造りをしたワケだが、思わぬ副産物があったという。「見られる」ことによる従業員の意識向上だ。
デリバリー専門店の内部はほとんど客に見られることがないから、つい清掃などがいい加減になってしまう。また、勤務先店内での悪ふざけの様子をSNSに投稿し炎上する「バイトテロ」が昨今頻発しており、宅配ピザチェーンも例外でない中、「ドミノ・ピザ」で同様の不祥事が起きない要因は、「見せる店舗、見られるスタッフ」だろう。
常に新たなことに挑戦してきた同社。例えば本家米国と違い道路が狭い日本の宅配事情を考慮し、開業時に屋根付き三輪バイク「ドミノジャイロ」を開発。また、1枚で4種類の味が楽しめる「クワトロ・ピザ」を日本で初めて発売。ネット注文を充実させ、スマホアプリやLINE注文も、業界でいち早く導入した。
筆者が今回注文したのもネットで、そのテクノロジーはすさまじい進化を遂げていた。まずは「ピザトラッカー」。画面上でピザ8カットの画像が少しずつ増えると共に、「受付完了」「トッピング」「オーブン焼成」「焼きあがり」「配達」「完了」という項目が表示される。自分が注文したピザが今どの工程にあるかを示すオーダー状況追跡システムなのだが、おっ、今オーブンに入ったぞ!なんて、気分も盛り上がる。
デリバリーの場合、次に「GPSドライバートラッカー」に引き継がれる。携帯のGPS機能で配達者の現在地が地図上に示されるシステムだ。ウーバーイーツやタクシーの迎車サービスなどでも利用されており、時間が読めて超便利。
他にも、ドミノだけの独自開発システム「ジャストタイムCOOKING」がある。こちらは「持ち帰り」への対応で、アプリから注文すると、客がクックゾーンに入ってからピザを作り始めるというサービス。注文者の位置とスピードを検知し、来店時に焼き立て熱々のピザを提供できる仕組みだ。う~ん、スゴイ。
今年全国700店を達成した同社、多店舗展開による時短配達を目指している。「近くのコンビニに行くより便利」であれば、同業他社だけでなく異業種にも勝てるという戦略だ。そこで焼き上がり時間を従来の5分から3分に短縮させるオーブンを開発。調理クルーもスピードアップのため、入店の際全レシピを記憶するそうだ。クオリティの維持も大切だと、ピザ作りの知識、技術を持つ社内有資格者「ピザメイクマイスター」を各店舗に配置しているという。
海外では既にドローンでの配達も始まっており、この業界はこれからますます進化して行くに違いない。コロナ禍でデリバリーに対するハードルが低くなったと同時に、宅配ピザ日本上陸時、その味に憧れた「ピザ世代」の応援も受け、ピザが日本の国民食になる日が来るかもしれない。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。