1969年の創業以来変わらぬ味を提供し続けている、東京浅草寺雷門近くの「浅草マノス」。同店公式サイトには「ロシヤ料理店から始まった下町のレストラン」とあり、ボルシチなど定番ロシア料理の他、帆立のコキールやカニコロッケなど洋食もいただける。
同店には名物料理がいくつかあるが、その一つが「つぼ焼きのクリームスープ」。ピロシキの生地をカップに被せてオーブンで焼いたスープで、こんもり膨らんだパン生地がキノコのよう。カップの取っ手に、小さな布の鍋つかみが付いているのがカワイイ。
中には濃厚なクリームスープと帆立が。ムチャクチャコクがあるのにくどくない絶妙なバランスで、お代わりしたくなっちゃう。
それにしても、コレってロシア料理?と調べたところ、「ガルショーク」という深鍋を意味するロシア語で呼ばれる、正真正銘のロシア料理であった。日本ではその見た目から、キノコを意味する「グリブイ」とも呼ばれるが、どうやら日本で付いた名前らしい。
お次は「ボルシチ」。世界三大スープの一つとされる王道のロシア料理だ。同店のそれは全てを赤く染めるビーツが濃すぎず上品な味わいだが、しっかりうま味があり、ほんのり甘味もあって、ホッとする味。元来ウクライナの伝統料理で、近世に入ってからロシアでも広まったらしい。
そして人気のメインディッシュが「ビーフストロガノフ」。ひと口大に切った牛肉を、ロシアのサワークリーム「スメタナ」で煮込んだ料理。発祥については諸説あるが、18~19世紀にかけて隆盛を極めたストロガノフ伯爵家に由来するというものが有力。現地でも人気だそうだが、広まったのは意外にも20世紀に入ってからだとか。
難しいことはさておき、同店のストロガノフはベージュ色のソースをまとった牛肉とキノコ、白いマッシュポテトと緑のほうれん草のソテー、黄色いサフランライスが盛り合わせてあり、真っ赤なピンクペッパーがあしらわれ、彩りはカンペキ。お味はと言うと、酸味が強過ぎずマイルドだが深い味わい。お肉は煮込み料理と言うよりむしろサッと焼いてソースと絡めた感じで柔らかく、ペロッといただけちゃう。
もう一つご紹介したいのが「ピロシキ」だ。具材の詰まったパンで、現地ではオーブンで焼くことが多いそうだが、油で揚げたものも。専門店もあるといい、気軽に食べられるロシアの伝統食。日本の「カレーパン」はピロシキに着想を得て作られたと言われる。
同店は揚げタイプだが、カレーパンのようにパン粉はついていない。外側が薄いのにひき肉がビッシリで、包むのに技術が要るだろうと思う。重量感タップリなのにナゼかサッパリ。別添のトマトソースもいい仕事をしている。
さらに、忘れちゃいけない逸品が、ロールキャベツならぬ「キャベツロール」!
続きは次号で。
今年もたくさんの口福をお届けします。よろしくお願い致します!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。