老舗ロシア料理店「浅草マノス」の看板料理で、テレビなどメディアへの露出も多い人気メニューがある。「キャベツロール」だ。
それもそのハズ。見た目ボリューミーでインパクト大、さては強敵?と思いきや、いざ食べようとナイフを入れると、あまりの超絶軟らかさにビックリ! 口に入れた途端に溶けちゃうくらいトロトロなのに、煮崩れていないのが不思議。
そのヒミツを、2代目の川村幸也社長に伺ってみた。使用している肉は、こだわりの和牛ひき肉。つなぎはパン粉でなくお米だそう。オーブンで長時間煮込んだ後、一晩寝かせてブイヨンを染み込ませるという。そしてうま味をタップリ吸ったキャベツロールを、トマトピューレベースの秘伝のソースで煮込んで仕上げる。ムチャクチャ手間が掛かっているのだ。
日本では洋食のイメージが強いが、コレって実は「ガルブツィー」と呼ばれるロシアの伝統料理なのだ。日本のロールキャベツの原型と言われるが、二つの違いがある。一つは煮込む前にフライパンなどで焼く工程が入ること、もう一つは先述の通りつなぎにお米を使うことである。
ガルブツィーのルーツは、世界三大料理の一つトルコ料理にあるらしい。トルコ周辺に古くからある、ブドウの葉で肉や米を包んで煮た「ドルマ」という料理がロシアに伝わったが、ロシアでは寒くてブドウの栽培ができないため、キャベツを代用したという。だからつなぎがお米なのだ。
では、なぜ日本ではパン粉を入れるようになったのか? 諸説あるが、パンを主食とするフランスなど、ヨーロッパ経由で伝わったからという説が有力。かつてロシア帝国の貴族がフランスの料理人を雇うことが多く、彼らはロシアから大きな影響を受けた。ガルブツィーをはじめとする料理はモチロン、「ロシア式サービス」もそうだ。
フランス宮廷料理は豪華さを演出するため、テーブルを埋め尽くすようにたくさんの料理を一度に並べていた。一方、ロシアの宮廷料理は、極寒の地ゆえ料理がすぐに冷めてしまうため、1品ずつ提供するスタイル。これをフランスの料理人が19世紀に入ってから母国で広めたのだそう。
話を戻そう。ロシア料理のガルブツィーが、日本の洋食として確立していく過程で「ロールキャベツ」と呼ばれるようになったが、コレは和製英語で、英語圏ではキャベツロールだ。同店がこの名称にこだわるには理由がある。
同店の店名「マノス」は、先代が修業したロシア料理店「赤坂マノス」の創設者チャーリー・マノス氏の名前が由来。赤坂では英語圏同様、キャベツロールと呼んでいたので、独立開業後もそれを受け継いでいるという。
浅草にはロシア料理の店が多く、いずれもキャベツロールを名物料理としているが、それはマノスの流れをくんでいるからに他ならない。
同店には口福なお料理がまだまだいっぱい♪ 筆者の大好物も!
次号に続く!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。