…といっても、動物でもなければ、マルちゃんのカップ麺でもない。今回の主役、油揚げと揚げ玉である。
またまた我田引水だが、筆者が役員を務めるお弁当製造販売会社「神田明神下みやび」で、このたび稲荷寿司(いなりずし)を全面リニューアル。これを機に、創業明治2年の油揚げ卸専門店「相模屋」の揚げに替えることに。150年以上油揚げ一筋だけあって、とても高品質で、だしがしっかりしみ込んでくれる。弊社秘伝のタレで煮てシャリを包めば、手前みそだが超ベリウマ♪
そもそも、なぜ稲荷寿司と名付けられたのか? 五穀豊穣の神様、稲荷神の使いである狐(きつね)の好物油揚げの中に、稲荷神がもたらしてくれたご飯を詰めた物だから、稲荷寿司と呼ばれるようになったそうだ。
実は、地域によって形が違う。関ヶ原辺りを境に、東は主に俵型、西は主に三角形のようだ。俵型は豊作を願い米俵の形を模したもので、三角形は狐の耳の形を表現したものといわれ、やはり稲荷神とその使いの狐に由来している。
話を戻そう。新作稲荷寿司、シャリに何も混ぜないプレーンタイプも用意するが、具材を混ぜ込んだモノも創作中。そんな中、4月5日から東京駅構内「グランスタ東京」で先行販売することに決まったのが、「天ぷら屋さんのたぬきつね」だ。弊社創業以来の人気商品稲荷寿司と、飲食店部門の柱である天ぷらをリンクさせようというコンセプトで、揚げ玉入りの稲荷だから「たぬきつね」。
弊社本店では、「太白(たいはく)」という極上のごま油を使用している。焙煎せず生搾りで、江戸時代同様圧力だけで搾っているピュアな油。この油で作った揚げ玉は、おいしいに決まっている。
それにしても、ナゼ揚げ玉は「たぬき」と呼ばれるのか? 蕎麦(そば)に載った天ぷらの中身がないから、種ぬきと呼ばれたのが転訛(てんか)して「たぬき」となったという説が有力。だが「きつねうどん」発祥の関西では、関東発の「たぬき」がピンと来なかったようで、「きつねがうどんなら、たぬきは蕎麦」と、同じ油揚げの載った蕎麦を指すという。
京都の「きつね」も油揚げだが、短冊切りにして九条ねぎと共に供する。そして、これをあんかけにしたのが「たぬき」だそう。湯気は出ないがものすごく熱いので、だます・化かすという意味で「たぬき」になったとか。
じゃあ、関西で揚げ玉が載った蕎麦やうどんを何と呼ぶのか? 「ハイカラ」だそうで、「丼と京風うどん」の全国チェーン「なか卯」でも、「はいからうどん」の名で販売されている。
ローソンで、天かす、天つゆ、青のりをご飯に混ぜた「悪魔のおにぎり」が大ヒットしたが、以前からこれは店の賄い料理だったし、商品化も考えていた。ちょっと出遅れたけど、満を持して天ぷら屋ならではの「たぬきつね」をリリースすべく、目下奮闘中だ。
狸(たぬき)の置物を集めている知人から、タヌキは「他(た)を抜き」トップに立つという意味で、吉兆の印だと聞いた。よぉ~し、頑張るぞ!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。